月刊・経済Trend 2008年4月号 巻頭言

少子化の現実的脅威を直視すべし

森田副会長 森田富治郎
(もりた とみじろう)

日本経団連副会長
第一生命保険会長

日本の株式市場は年初から急激な下落に見舞われた。この急落にアメリカ発のサブプライム問題が大きく関わったのは言うまでもないが、要因は決してそれだけではない。

サブプライム問題が火を吹く前から、日本経済の成長について、その力弱さと外需頼みの危うさを指摘する声は少なくなかった。そしてその反映と見るべきか、昨年の日本株は年間11%の下落という、世界の株式市場の中で一人負けとも言うべき状況を示した。昨年の日本経済には建築基準法改正問題が大きく影を落とし、これが住宅投資と設備投資のブレーキとなって、元々低調な内需を一段と冷え込ませた。その結果2007年度の実質経済成長率は、1.6%前後と、前年の2.4%より大きく落ち込む見通しである。

こういう特殊要因を除いても、日本の内需の弱さは否定できず、これが、2002年2月以降成長局面を続けているといいながら、いまだにデフレを脱却できないことの根本的要因でもあろう。要するに、最近の日本株式市場の動揺と、同時に進行した金利、為替の変動には、サブプライム問題の下に内需停滞という日本経済の構造問題が存在するのである。

内需停滞の最も重要な要因は、端的に言って少子化問題である。日本の生産年齢人口は、1996年から減少に転じた。そして早くも翌97年から、全国百貨店・スーパーの売上高(既存店ベース)が前年比マイナスに転じ、また、食品・飲料等生活必需品の売上伸び悩み、国内新車販売の減少等、個人消費には下方圧力がかかり続けているのである。そしてこの圧力は生産年齢人口減少のスピードアップに伴って、なお急速に増していくのは必至である。

今後の成長戦略は、この点を正面から見据えるものでなければ、実効性を持ち得ないであろう。併せて、問題の甚だしい困難化を防ぐために、改めて少子化対策そのものに、腰を据えた取り組みを行わなければならない。


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