月刊・経済Trend 2009年1月号 巻頭言

使命

御手洗会長 御手洗冨士夫
(みたらい ふじお)

日本経団連会長

新年、明けましておめでとうございます。

今、世界経済を取り巻く状況は、かつてないほどの危機を迎えている。昨年夏以降に米国のサブプライムローン問題から始まった金融危機がたちどころに飛び火し、世界中の金融資本市場を混乱の渦に陥れた。原燃料価格や為替の急激な変動と相まって、新興国や資源国を含めた世界経済全体が減速傾向を強めている中で、わが国経済は非常に厳しい状況に置かれている。

また、今般の動きでも顕在化したが、経済のグローバル化の流れはますます加速しており、国際的な結びつきが一層緊密化しているため、もはや一国の課題は国内だけにとどまらない。その反面、各国政府は連携して迅速な対応に努めているが、環境や貧困問題などに代表されるように、地球規模の解決が不可欠な課題が他にも山積している。昨秋の米国大統領選挙の結果とその評価からも、世界中で強いリーダーシップの発揮と変革を求める声が強まっている。

こうしたなか、わが国としては、経済成長力の強化、財政健全化と持続的な社会保障制度の確立、地域経済の活性化などを柱とする難題に国を挙げて取り組み、今の逆境を克服することが最優先課題となる。先の読めないような大きな変化が突如として生じる時であるからこそ、実績と経験に裏打ちされた高い技術と知見でもって、希望あふれる未来への具体的な道筋を早急に示すべきである。われわれには、着実な改革の遂行を通じて世界中の危機からの脱却を図り、未来の世代への責任を全うする使命が課されている。ここで現状に拘泥して新たなる挑戦を放棄することは、課題を将来世代へ先延ばしにするのみならず、問題の深刻化を助長することと同義である。

国益を追求し、国民を第一に考えれば、それぞれ自らが進むべき道は明らかである。今年も、われわれの考え方に対する各界からの意見に真摯に耳を傾けながら、総力を結集して諸課題に取り組む所存である。


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