月刊・経済Trend 2009年6月号 巻頭言

政策を総動員して成長軌道に回帰する

御手洗会長 御手洗冨士夫
(みたらい ふじお)

日本経団連会長

世界は、今未曾有の危機に直面している。国際的な金融システム不安はいまだに収まりを見せず、実体経済への影響が深刻になってきている。各国が大規模な経済対策を実施し、国際的な連携を強化することで、金融の機能強化や経済の活性化に向けた対策を実行し始めているが、依然として立ち直りの道筋は見えていない。その上、わが国では、世界に類例を見ない急速な少子化・高齢化、深刻な財政赤字、そして社会保障制度への不信感から、国民は将来への展望を失いかけている。

しかし、われわれはかかる難局に怯むことなく、今こそ、前例に囚われず、将来を見据えた大胆な経済政策を速やかに実行するとともに、不退転の決意で経済社会の構造改革に取り組むことで、希望あふれる未来を築くための基礎を固めておかなければならない。道のりは険しいが、日本の潜在力を引き出し、希望の国を造り上げることこそが、われわれに課せられた未来の世代への責任を全うする道である。

まずスピーディに取り組むべきは、当面の困難を克服するために、日本版ニューディールの推進、経済社会のセーフティネットの充実強化や雇用の安定と創出、国際金融市場の機能強化・安定化と東京市場の活性化、民間活力の徹底、政治改革の実現である。

また、将来の成長に向けて、少子化対策や成長モデルの確立をはじめ、税・財政・社会保障の抜本改革、ビジネス・インフラの整備やイノベーションの推進、国際関係の深化と拡大を含めた、競争力強化に資する取り組みを行い、成長の糧となる堅固な基盤を整備すべきである。

そして、希望の国の実現に向けて、現行の枠組みを大幅に変更する必要がある。社会生活にも直結するような、道州制の導入、電子行政・電子社会の実現など、国民生活が豊かで便利になるだけでなく、規律を備えた、理想的な社会の実現に向けて取り組むべきである。

着実に前進を続け、持続的な成長への回帰を確かなものとするために、引き続き、総力を結集して諸課題に取り組む覚悟である。


日本語のホームページへ