経営タイムス No.2638 (2002年7月18日)

日本経団連理事会、3議件を審議

−「国際投資ルールの構築」提言など


 日本経団連は16日、東京・大手町の経団連会館で理事会を開催した。推薦会員推挙と役員等補充選任などを諮るとともに、国際投資ルールの構築に関する提言、廃棄物・リサイクルの基本問題に関する提言について審議を行い、雇用保険制度改革や国際熱核融合実験炉をめぐる動向などを、各委員会が報告した。

 今回の理事会では、3つの議件を審議。冒頭行われた推薦会員推挙と役員等補充選任、会員異動については、福原義春・資生堂名誉会長と常盤文克・花王特別顧問の推薦会員への推挙や新たに3社の入会などの案が示され、承認された。これにより会員数は16日現在1540となった。『国際投資ルールの構築と国内投資環境の整備を求める』と題する国際投資ルールの構築に関する提言については槙原稔副会長・貿易投資委員長から説明。廃棄物・リサイクルの基本問題に関する提言『循環型社会の着実な進展に向けて』については、庄子幹雄・環境安全委員会廃棄物・リサイクル部会長が説明し、承認を得た。

 この中で、国際投資ルールの構築に関する提言では、企業活動のグローバリゼーションが進展し、物品やサービス貿易だけでなく海外投資も国境を越えて行われているにもかかわらず、多国間を包括する投資ルールが存在しないと指摘。日本経済界として望ましい国際投資ルールの構築と、国内における投資環境の整備を強く求めている。

 廃棄物・リサイクルの基本問題に関する提言では、これまでの産業界によるリサイクル・適正処理の取り組みと成果を評価した上で、今後も資源循環型社会の構築への協力を表明した。さらに、不法投棄の未然防止とリサイクル推進は別問題として捉え、不法投棄については、違法行為であることを周知徹底させ、監視・摘発体制の強化と不法投棄実行者への厳罰の適用等で対処すべきとした。一方、リサイクルについては、資源循環促進の観点から、規制緩和と新たな法的枠組みの中で考えるべきであるとした。また、循環型社会における廃棄物処理法の位置付けは、最終処分する物を最小化する努力をした上で、それでも処分する必要のある物を対象とする法律とすべきことを主張。特に廃棄物の定義については今後十分な議論が必要であり、すでに有価で引き取られているリサイクル可能物は、引き続き廃棄物処理法の規制対象外とすべきであると要望している。また、建設工事に際して発生する土砂や泥土等については、新たな法制化等により同じ括りのなかで品質、安全性をコントロールする仕組みを作り、有効に利活用すべきことを指摘した。

 これら議件の審議に続いて、各委員長から報告が行われた。

 台湾・台北市で11日に行われた東亜経済人会議第14回幹部会議の模様については、「日台双方の最近の経済情勢」「東アジアの国際分業体制と今後の見通し」「日台FTA(自由貿易協定)に関する双方の検討状況」をテーマに、率直な意見交換が行われたことを、香西昭夫副会長・東亜経済人会議日本委員会委員長が報告した。

 柴田昌治副会長・労働問題研究委員長からは、労働問題研究委員会の発足を報告。あわせて、改革が議論されている雇用保険制度について、見直しが必要であることを強調し、保険給付と保険料・公的負担の両面から、雇用保険制度改革への日本経団連の基本的姿勢を説明した。さらに、最近の労働組合の動向として、連合の来春闘の取り組みについても報告した。

 国際熱核融合実験炉(ITER)をめぐる動向については、前田又兵衞・むつ小川原開発推進委員長が報告。ITERが、核融合反応を人類の恒久的エネルギーとして活用するための国際的な研究開発計画であることを指摘した上で、日本としては青森県六ヶ所村を候補地として誘致活動していくことが決定されており、海外3ヵ所の候補地との競争となっていることを説明。計画推進のためにはなにより国民の理解が必要であり、引き続き、日本経団連としても支援していくことを述べた。

 理事会の最後、奥田碩会長は最近の企業不祥事に関連して、社会から共感と信頼が得られる企業となるよう、「企業行動憲章」の遵守を強く呼びかけた。


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