経営タイムス No.2640 (2002年8月1日)

日本経団連・東富士夏季フォーラム

日本のアイデンティティなど参加者が問題提起し討議


 討議の冒頭、参加者が日本のアイデンティティ、日本のあり方などについて問題提起をし、それをもとに討議が行われた。

 まず問題提起では、「日本のアイデンティティについては、内外ともに理解される必要があり、“世界一クリーンな国”や“高齢化社会のよき先例”をめざすことで、とくにアジアに貢献できるのではないか」。また、「日本は世界の安定のためにいかに貢献できるかが求められており、そのために、多様な人材を担保する必要がある」。さらに、「日本のあり方を考えるには、企業のコア・コンピタンスを意識し、どの分野で向上し、それをいかにアピールしていくべきかを考える必要がある」などの発言があった。

 これらを踏まえ、自由討議ではさまざまな意見が出された。とくに、「日本の国益は、いまの若者が何になりたいのかによるところが大きい」ことから、教育・人材育成の重要性が指摘された。

 また、「東京中心の考え方を改め、地方の独自性を醸成していく中で、ナショナルミニマムの考え方が出てくる」という考えから「道州制導入の提案」がなされたほか、「日本はレベルの高い均質な人材が多く、この状況をいかに発信していくか、優秀な人材を海外から受け入れ、また優秀な日本人を海外に出していくことが必要である。このためにはまず英語を使うことが重要である」とする意見が出た。

 さらに、「しっかりとした死生観をもつことが重要である。昔の日本には死生観があり、これは外国人からも認められるものであったが、戦後、この意識が遠のいてしまった」との意見に対して佐伯教授は、今後の日本の課題としては、武士道といった精神の核となるエートスと人格的魅力、人を説得させる能力をもち合わせた人材、つまりエリート階級の養成が重要であることを強調した。

 そのほか、「日本の国家機構や制度に対する信頼感の再構築が必要である」「国共通のフレームワークで議論するのではなく、地方ごとに複数のリズムが出始めていることを前提に、複数のアイデンティを確立していく必要があり、このことが“多様性”の議論につながる」など、活発な議論が展開された。


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