経営タイムス No.2647 (2002年9月26日)

豊かな日本の創造と東北経済再生へ−東北地方経済懇談会開く

−日本経団連と東経連が共催、意見を交換


日本経済団体連合会(日本経団連、奥田碩会長)と東北経済連合会(東経連、八島俊章会長)共催による東北地方経済懇談会が20日、宮城県仙台市のホテルメトロポリタン仙台で開催され、両連合会首脳はじめ東経連会員など250名が参加した。冒頭あいさつで奥田会長は、10月に「企業行動憲章」を見直し、企業倫理徹底と企業不祥事防止に取り組む決意を示した。懇談では、「豊かな日本の創造と東北産業経済の再生を目指して」をテーマに、税制抜本改革や東北産業経済の再生、地方分権改革、今後の住宅政策など当面の諸課題や取り組み状況について、両連合会首脳から報告があり、意見を交換した。
八島会長は開会あいさつで、東北の景気情勢にふれ「誘致工場の閉鎖や産業空洞化などを背景に雇用や個人消費が低迷。先行きは予断を許さない」と説明。「この難局打開には新時代にふさわしい東北経済の再構築が必要」であり、その実現のため東経連では、今年度最重点事業として (1)東北産業経済の再生 (2)県境を越えた広域連携の推進 (3)国際交流と国際観光事業の推進に取り組んでいることを明らかにした。
奥田会長も景気情勢について厳しい認識を示し、「日本経済はまったく楽観を許せない状況にある。最近の株価の下落が日本の金融システムに与える影響も懸念される」と述べた。
さらに、最近の企業不祥事にふれ「企業に対する信頼が失われれば、市場経済は機能しなくなる。トップ自らが社内の倫理観の高揚、情報開示の充実を図らねばならない」と強調。日本経団連としても、10月に現行の「企業行動憲章」を見直し、企業倫理徹底と企業不祥事防止に取り組む決意を示した。

■ 日本経団連

懇談では、日本経団連から森下洋一副会長が税制抜本改革の推進について説明。森下副会長は、17日に発表した「平成15年度税制改正に関する提言」前号既報)を基に (1)国際競争力強化に向けた法人税制の抜本改革 (2)金融・証券市場の活性化に向けた税制措置などのポイントを説明した。
「地方分権改革の推進について」は西室泰三副会長が、地方分権改革に対する日本経団連の考え方などを説明。この中で西室副会長は地方分権改革における事務・事業の見直しについて「単に国と地方の権限委譲にとどめず、意義の低下した事務・事業や各種規制の廃止、事務・事業の実施体制の見直しも同時に行うべき」であるとした。
「今後の住宅政策に向けた取り組み」では、奥井功副会長が、住宅建設は経済全般への波及効果が大きいことから「デフレ脱却の切り札として期待されている」と強調。住宅税制を含め来年度税制改正に焦点を絞り提言をまとめ、政府・与党への働きかけを開始したことを説明した。
教育問題では、樋口公啓副会長が「グローバル化時代に対応した教育基盤の整備」について、企業人の能力開発の重要性などを説いた。この中で樋口副会長は、従業員1人ひとりが高い職業能力を持つこと、つまりエンプロイヤビリティを形成することがグローバル競争に打ち勝つことにつながると語った。
「日本経団連の政治への取り組み」では、前田又兵衞企業人政治フォーラム会長代行が、同フォーラムの活動内容を紹介するとともに「政治との関係強化のため、より多くの方に参加願いたい」と同フォーラムへの入会を要請した。
最後に、和田龍幸事務総長が「最近の金融情勢とペイオフ問題」について説明。
ペイオフ問題については、「企業の9月期決算の内容などを見ながら、経済界としてのコンセンサスを図りたい」とした。

■ 東経連

東経連からはまず、評議員会議長の松村富廣氏が、「東北産業経済の再生に向けた取り組み」について報告。「地域産業経済の国際競争力の強化」を基本に据えた「東北産業再生プログラム」の策定作業を進めていることを明らかにした。同プログラムは、産学連携などを通じ地元企業の技術力の蓄積を図るもの。「意思疎通と課題解決のため、産学官トップのラウンドテーブル実施を呼びかけていく」との方針を示した。
東経連副会長の勝股康行氏は「東北における環境問題の取り組み」について、廃棄物リサイクル促進をめざした活動の一環として「プラスチックリサイクル促進のために事業者の情報を収集し排出者に提供する事例集を作成。欧州環境エネルギー調査ミッションによる先例事例の調査を行う予定」と説明した。
東経連副会長の齋藤育夫氏は「地方分権改革の推進」の課題として、(1)国から地方への財源委譲の早期実現 (2)地方交付税制度の維持 (3)人材の育成・確保を挙げた。とくに、地方分権を進め、地域産業の活性化や域内外へのネットワーク構築のため人材の育成・確保が重要と述べた。
こうした地方分権推進の大前提となる地方自立のための骨格的な基盤整備については、東経連副会長の辻兵吉氏が報告。辻副会長は、「高速道路などの基礎的社会資本は、地域の自立と発展、活力ある経済社会の形成に不可欠。現状の産業や人口集積を前提とした短期的な経済効率に目を奪われるのでなく、長期的視点に立って計画的に整備・推進していくことが重要」と訴え、日本経団連首脳に理解協力を求めた。
東経連副会長の林光男氏は「東北における国際交流事業」の一例として、「中国・東北日本国際交流ミッション」をこの日派遣したことを紹介。その上で、今後も北東アジアとの地域間交流を継続していくとの考えを説明した。また、5カ国語の同時会話ハンドブック作成など外国人観光客の受け入れ体制も整備。「東北ブランドの売り込み」に注力していると強調した。


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