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経営タイムス No.2651 (2002年10月24日)

「小泉改革を支援する1000人の集い」

小泉総理との意見交換

−金融・雇用問題など


東アジア経済共同体設立を

(出井伸之・ソニー会長兼CEO)
小泉総理には、日本、中国、韓国、マレーシアなど東アジア諸国の経済共同体設立にリーダーシップを発揮してほしい。小泉総理は日本の経済力やこれまでの外交力を背景にリーダーシップがとれる立場にあると思う。もちろん東アジア共同体はすぐにできるものではない。当面、東アジアの環境・エネルギー、ブロードバンド通信などの分野でイニシアチブをお取り願いたい。これらを通じて、自由貿易主義を段階的に拡大していくことができる。東アジア諸国による経済共同体の市場規模は、世界の人口の32%、同GDPの20.4%を占める大経済圏となる。

(小泉総理)
今年1月にシンガポールなどアセアン諸国(5カ国)を歴訪した際、各訪問国で日本への強い期待を感じた。アセアン重視政策に小泉内閣も変わりない。アセアン諸国でもITが進展しており、これに遅れると経済発展はないと思う。これからは、アセアン諸国もEUのような形で連携がいっそう深まればよいと思う。

(坪井孚夫・福島貸切辰巳屋自動車相談役)
小泉改革は、日本が持続的な成長軌道に乗るために避けて通れないものである。21世紀の命運をかけた構造改革のラストチャンスであり、心からエールを送りたい。日本商工会議所としても他の経済団体と連携し中長期的課題として全面的に支持したい。長引くデフレで中小企業経営は厳しい状況にある。経営側も努力するが政府の支援の必要性が増している。デフレからの早期脱却のため柔軟かつ大胆な経済運営をお願いしたい。ひとつは、金融・雇用面でのセーフティネットの拡充。中小企業向けの「信用保証制度」を充実させるとともに、政府系金融機関の見直しは当面、凍結してもらいたい。道路建設問題については、道路は、公共財であり真に必要なものは、国費を投じて建設を推進すべきである。道路公団の健全化問題とは切り離して論議すべきである。

(小泉総理)
政府系金融機関の見直しは凍結するというと、ずっとこのままになる。民間金融機関がやらないから政府系金融機関がやっている。当面、政府がやるべきことはやるが、将来は民間にやってもらう。官は補完するだけだ。雇用対策はしっかりやる。道路建設と公団の健全化の問題は切り離せない。税金の無駄遣いをなくすためである。

構造改革の信念に共感

(桜井正光・リコー社長)
われわれは、企業競争力強化のために全力を尽くす。小泉総理には、その環境整備をたじろぐことなく積極的に推進してほしい。民間の活力を高め、成長性のある分野に経済の比重を移していくという、構造改革の目標は明確であり、その信念に共感を覚える。民間活力の主役は、企業であり、その競争力を強化することなくして日本の再生、成長はない。企業の競争力強化、産業構造の再構築には、大幅な規制緩和が必要である。また、グローバルな企業競争力発揮の阻害要因を排除してほしい。具体的には、法人税の実効税率の引き下げを望む。

(小泉総理)
日本製品は、国際的に高く評価されている。品質・性能が良いからだ。胃カメラの内視鏡の分野では、1社で世界の70%シェアをもっているメーカーもある。かつて日本は海外から真似が上手といわれた。しかし、今は真似されている。企業には今後も消費者の潜在需要を掘り起こしてもらいたい。

(水野清・日本再建のため行革を推進する700人委員会代表世話人)
最近、民営化の歯車があちこちで回り始めている。郵貯から特殊法人に流れているカネが不良債権化している。これはきわめて大きな問題である。国民の金融資産の3分の1以上のカネが特殊法人に流れている。こうした特殊法人を単に民営化するだけでなく、上場させるべきである。

(小泉総理)
郵政の民営化は、特殊法人や政府系金融機関の問題と密接な関係がある。つまり、郵政民営化が改革の「本丸」である。改革の道筋はできた。この改革を後戻りさせてはならない。

(青木孝子・IBMアジアパシフィックサービス次長)
デフレの進行などで暗い話が多い。いつになればこのトンネルを抜けるのか。将来に対して希望を見出せない。いつになったら改革の成果がみえてくるのか。具体的な展望を示してほしい。真摯な改革の姿勢が伝われば、国民の政治への信頼が深まり改革は成功すると思う。

(小泉総理)
不良債権処理や拉致問題などの報道が多く、改革の具体的な方針などで報道されないものが多い。例えば、「5年間で530万人の雇用創出」という具体的な展望を示しているが、マスコミにあまり取り上げられないのが事実である。


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