[ 日本経団連 ] [ 機関誌/出版物 ] [ 経営タイムス ]

経営タイムス No.2657 (2002年12月16日)

日本経団連、連合首脳が懇談

−雇用問題で意見交換/政労使合意、改めて協力体制確認


日本経団連と連合は5日、東京・大手町の経団連会館で、9月に続き2回目の首脳懇談会を開催した。懇談には日本経団連から奥田碩会長はじめ13名が、連合から笹森清会長はじめ13人が出席し、4日の政労使雇用対策会議で発表した「雇用問題に関する政労使合意」について改めて協力体制を確認するとともに、今後、不良債権処理加速によって予想される失業・倒産の増加への懸念から、労使が協力して毅然とした対応を取らなければならないことなどで認識を共有した。

「来春の労使交渉」でも論議

会合の冒頭あいさつした笹森連合会長は、雇用問題で政府が労使に呼びかけ合意したことについて、「いままでにないきわめて画期的なこと。その重みを受け、それぞれが責任をもって役割を果たすべき」とし、また、合意の中で労働側が雇用コスト削減に踏み切ったことについては、「あくまで雇用維持が前提」と強調した。
奥田会長は、いまだ経済の現状は厳しく、消費の低迷、外需の下振れも払拭できない状況を憂慮。さらに、今後明らかになる竹中平蔵・経済財政・金融担当相の進める「竹中プラン」が経済に与える影響の大きさを懸念し、「労使で行方を注目し、失業・倒産が増加するなら毅然とした対応をしなければならない」と訴えた。

意見交換では、連合側から政労使合意について意見が集中。具体的には「労使で合意しても、合意の中身が担保されなければ疑問が残る」をはじめ、「合意内容が中小企業にまで徹底されるのか懸念される。企業の末端にまで内容を徹底してほしい」「雇用に関しては必ず答を出さなければならない。合意に基づいて結果の出る取り組みにしたい」「画期的で評価はできるが、先送りすることなくいかに早く取り組むかにかかっている」などの意見があがった。
また、来春の労使交渉で連合がベアの統一要求を行わないことについて、「一律ベア横並び要求はしないが、個別の企業の中で要求を検討することは否定していない。経営側も『ベアは論外』と一律に論じるのはいかがなものか」と疑問を投げかけた。ベア問題について笹森会長は、「ベアの表現は消えたが、全体の底上げを重視したい」とし、経営側に対し、「個別交渉の中で真摯に対応してほしい」と述べた。

これらの意見に対し日本経団連は、10月に「緊急雇用対策プログラム」で具体的な雇用創出プランを発表したことや、今年度中に具体化を急ぐ必要のある措置をまとめた「産業再生に向けて」と題する要望を行ったこと、さらに、今回の政労使合意内容をすでに、業種団体・地方経営者協会などを通じて中小企業にまで周知を図っていることなどを報告した。

「経労委報告」で報告・説明

また、日本経団連側から、労使交渉の指針となる「経営労働政策委員会報告」(経労委報告)について、17日開催の理事会の承認を得て発表することも報告。旧日経連が1974年、春季労使交渉における経営者としての基本的態度・考え方を表明することを目的に設置した労働問題研究委員会(労問研)が、労働問題のみならず企業経営に関連する問題を広く取り上げてきたことから、新団体では同委員会を「経営労働政策委員会」(経労委)と改称、奥田会長自ら議長を務め、副会長の柴田昌治委員長とともに報告書の取りまとめにあたった経緯を説明した。
そのほか、「産業再生の見地から国際競争力を高めつつ企業の合理化は続けるべき」「中国を含めた新しいアジアの共通マーケットをつくらなければならない」「海外移転や外国人労働者の問題など、人事制度・賃金制度の中にもグローバル化が入ってくる」など、グローバル化を大きなテーマととらえる意見が多くあがった。

独禁法と雇用関係も

また、独禁法が雇用に及ぼす影響についても指摘。合併・統合を認める条件となる子会社の株切り離しや、親会社からの派遣取り止めなどが、雇用問題に大きな影響を与えることを労使が認識し、政府の動きに注目すべきであることを示唆した。

次回首脳懇談会は、春の労使交渉を中心テーマに、来年1月16日に開催する予定。


日本語のトップページ