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経営タイムス No.2661 (2003年1月30日)

日本経団連が第1回企業倫理トップセミナー開催

−奥田会長、トップの指導力の大切さを強調/不祥事再発防止促す


日本経団連(奥田碩会長)は21日、東京・大手町の経団連会館で「第1回企業倫理トップセミナー」を開催した。セミナーには、会員企業の社長・会長75名を含む企業倫理担当役員など440名が参加した。奥田会長(企業倫理行動委員長)は、「企業倫理確立に向け、いくら努力してもやりすぎることはない。何より大切なのは、経営トップのリーダーシップ」と強調し、企業不祥事の再発防止を促した。

企業倫理、参加企業が取り組みを報告

セミナー冒頭、池田守男・日本経団連企業行動委員会企画部会長は、企業倫理確立に向けた取り組みについて説明。日本経団連では、昨年10月15日に、「企業行動憲章」の改定を含む「企業不祥事防止への取り組み強化」を決定したが、「会員各位には、その実現・実行方をお願いしたい」と要請した。
池田部会長はまた、「企業活動の重要な基盤は社会からの共感と信頼である。消費者・ユーザーの信頼を裏切る行為等は、その基盤を自らの手で崩壊させるに等しい」と強調。「本セミナーを通じ、企業倫理の重要性を再認識され、経営トップにはイニシアチブを強化してもらいたい」と開催趣旨を述べた。

続いて、弁護士の中島茂氏が「コンプライアンス経営確立のために」をテーマに講演。中島弁護士は、昨今の企業不祥事は「残念なことだが、消費者・ユーザー軽視に対する市場からの厳しい批判である」と指摘。「経験則から、究極的に企業を守るのはコンプライアンスしかない」と強調した。その上で、コンプライアンスという言葉の意味は、単に「法律を守ること」ではない。「(消費者などの)期待に応えること」と解釈すべきである、と説いた。
また、「コンプライアンス経営確立」の具体策として、(1)明解な「コンプライアンス規程」を制定する (2)コンプライアンス・ホットラインを設置する (3)失敗に学び、再発を防止する姿勢を持つなど、の十カ条を挙げた。
中島弁護士は各条の説明で「コンプライアンス規程は、消費者、従業員、地域社会、株主に対するものの4項目とし、明解かつシンプルな表現を心がける」「現場からの声を聴くホットラインは不可欠。これは、企業を救う命の電話である」「経営トップは、自社の評判を聞くため、世論へのアンテナを持つべき」などと語った。

セミナーではまた、参加企業から企業倫理に関する取り組みについて報告があった。
松下電器産業の上野治男常務は、「企業倫理とは、企業が人間らしさ、他人への配慮をもっと追及すること」であると語り、今こそ、経営理念、創業理念の確実な実践が求められている、とした。
同社では、女性相談や企業倫理のホットラインを設置しているが、「情報収集や問題の早期解消、社内けん制機能を発揮している」とのこと。
三井物産の中川一巳副社長執行役員兼チーフ・コンプライアンス・オフィサーは、業務遂行にあたり、「お客様の期待に応えているか」「新しい価値を創造しているか」「正当なプロセスを踏んだ仕事か」「社会にとって意味のある仕事か」を自問自答するよう全社員に徹底させ、「もし、その答えがノーなら、その仕事はやってはならない」という倫理意識の確立をめざしている、と紹介。「営業利益追求と企業倫理のバランスで悩むこと自体が間違い。企業倫理最優先の意識を徹底させている」と結んだ。
東京電力の田村滋美会長は、不祥事の再発防止のため企業倫理委員会の設置等の体制整備、業務マニュアルの総点検などを進め「させない仕組み」や「しない風土づくり」に努めたいと述べた。
三菱樹脂の宮部義一相談役は、「企業トップは、供給者の論理から消費者の論理へ頭を切り替える必要がある。また、不祥事の再発防止や消費者への対応には、スピードが求められる」との考えを示した。

奥田会長は閉会あいさつで、セミナー参加者が会場を埋め尽くしたことを「企業倫理への関心の高さ、参加者の固い決意を示すものと理解する」と表明。その上で、「企業倫理確立に向け、いくら努力してもやりすぎることはない。もし、不祥事が起きたら、経営トップ自らが問題解決にあたり、説明責任を果たしてほしい」と求めた。
また、企業倫理の確立は、民主導・自律型の経済社会を築くための大前提であるとの考えを示し、「企業活動への共感と信頼がなければ、新しい日本を作る原動力になり得ない。何よりも大切なのは、経営トップのリーダーシップ」と企業不祥事の再発防止を促した。


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