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経営タイムス No.2675 (2003年5月15日)

日本経団連、細田科学技術相と懇談

−バイオテクノロジーや知的財産などで意見交換


日本経団連(奥田碩会長)は8日、東京・大手町の経団連会館で細田博之・科学技術政策担当大臣との懇談会を開催した。政府からは細田担当大臣、米田建三・内閣府副大臣、総合科学技術会議議員らが、日本経団連からは吉野浩行副会長、西室泰三副会長らが参加。バイオテクノロジーや知的財産政策、IT・ナノテクノロジー、産学官連携、宇宙開発利用、エネルギー・環境などについて意見を交換した。

冒頭のあいさつで吉野副会長は、厳しい国際競争への対応と新産業創造による日本経済の活性化のために科学技術が必要との考えを示した。また、内閣府の総合科学技術会議の活動を評価した上で、「日本経団連と連携しながら、活動を強化していただきたい」と語った。
細田担当大臣は、平成16年度の予算編成を前に「産業界の意見を整理して、予算などに反映していきたい」とあいさつ。さらに、科学技術版ダボス会議と産学官連携推進会議の開催に向けて日本経団連の協力を求めたほか、科学技術政策の現状などについて報告した。

各委員会などの意見を陳述

続いて、日本経団連から各委員会等の意見陳述を行った。
吉野副会長は、総合科学技術会議の活動を強化すべき事項として、(1)科学技術行政における国際的視点の導入(2)研究予算評価の強化と予算の柔軟な対応(3)初等・中等教育における科学技術教育の充実――などを挙げ、政府に対応を求めた。

庄山悦彦・産業技術委員会共同委員長は、昨年末に政府がとりまとめたバイオテクノロジー戦略大綱のフォローアップを要請。また、知的財産権では、職務発明の対価額を裁判所が最終決定している現状について、「企業に合理的プロセスに基づく取り決めがあれば、それを尊重すべき」と述べたほか、国際標準化戦略の重要性や産学官連携での知的財産権の柔軟な取り扱いにも言及した。

中村道治・産業技術委員会重点化戦略部会長は、ITを活用した国際競争力の高い生産システムの実現を指摘。さらに、シミュレーション・実証ソフトウェア開発の一層の取り組み、日本経団連が提言したナノテクノロジーがめざすべき12産業の実現促進などを呼びかけた。

山野井昭雄・産業技術委員会産学官連携推進部会長は、大学生全体のレベルが低下していると指摘。技術人材の育成が、将来の企業の存続を左右する問題であるとした上で、「大学の国際競争力の強化を進めるべきだ」と強く訴えた。

宇宙開発利用推進会議の谷口一郎会長は、(1)地上インフラ同様の宇宙の活用推進(2)宇宙の安定的利用への国の役割強化(3)昨年6月に総合科学技術会議がまとめた宇宙政策の具体化に向けた各省間の連携の強化・フォローアップ――などを要望した。

資源・エネルギー対策委員会の秋元勇巳委員長は、原子力発電所の停止による夏場の電力不足について「極めて憂慮すべき状況」と強い懸念を示し、政府に一層の尽力を求めた。ITER(国際熱核融合実験炉)の日本誘致については、国をあげての取り組みを引き続き要請。また、環境問題には技術開発が不可欠とし、民間の技術開発を促す支援を政府に求めた。環境税については、「環境税ありきの姿勢は本末転倒」と述べ、環境と経済の両立を図る政策検討の必要性を強調した。

その後の懇談では、日本経団連から職務発明の対価額やIT、エネルギー問題など、総合科学技術会議の議員からは、日本の研究開発投資や環境問題、高等学校教育などについて発言があった。
最後に、司会を務めた庄山共同委員長が、「今日議論した点などは、日本経団連の委員会等で検討を進めてご報告したい」と結んだ。


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