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経営タイムス No.2679 (2003年6月12日)

日本経団連、関西会員懇談会開く

−「民主導・自立型経済社会」実現へ意見交換/奥田会長が3重要課題提起


日本経団連(奥田碩会長)は3日、大阪・中之島のリーガロイヤルホテルで関西会員懇談会を開催した。懇談会には、奥田会長はじめ首脳役員、関西地区会員など約200名が参加し、「民主導・自律型の経済社会の実現を目指して」をテーマに意見を交換した。奥田会長は、「民主導・自律型の経済社会」実現の重要課題として、(1)社会保障、財政、税制の一体的改革 (2)グローバル競争を勝ち抜くための国としての競争基盤の強化 (3)地方の多様性を活かした発展――の3つを提起。その上で、「これらの実現には、さまざまな制度改革が必要となる。それはまさに政治が果たすべき役割だが、企業人は、政治に主体的に働きかけ、改革を加速していかねばならない」と強調した。会合では、日本経団連首脳から当面する課題や取り組み状況が報告されたほか、柿本寿明・日本総合研究所理事長はじめ関西地区会員から関西経済の現状や産学官の連携問題などについて発言があった。

冒頭あいさつで奥田会長は、年初に発表した日本経団連新ビジョンにふれ、同ビジョンがめざす「民主導・自律型の経済社会」の実現に向けた活動を今後、強力に展開していくとの考えを示した。
加えて、その実現に向けた重要課題として、(1)社会保障、財政、税制の一体的改革(2)グローバル競争を勝ち抜くための国としての競争基盤の強化(3)地方の多様性を活かした発展――の3つを提起。このうち、社会保障、財政、税制の一体的改革で、「現役世代や企業のみに、税や社会保障の過重な負担をかけるのではなく、国民全体が広く公平に負担を分かち合う必要がある」として、具体的に「消費税を積極的に活用していく必要がある」と説いた。

活動報告

活動報告ではまず、日本経団連から、槙原稔副会長が「わが国通商政策の課題」について、「日本経団連として先月、タイとの経済連携協定に関し、できる限り早く政府間交渉を開始すべきとの意見書を提出した」ことなどを説明した。

次に「規制改革への取り組み」に関し柴田昌治副会長が、日本経団連が取りまとめた意見書(新ビジョンに基づく「規制改革プログラム」)について、「大胆な規制改革推進のために規制改革基本法の制定を提案している」ことなどを報告した。

「コーポレートガバナンスと会社法の改正」については、御手洗冨士夫副会長が説明。その中で、日本経団連法規委員会の昨年末のアンケート調査結果<PDF>で、改正会社法施行により「委員会を柱とする経営機構」の導入を検討している企業は99社中6社と少数であったが、春以降は積極的に活用していこうという動きもあると述べた。

意見交換

意見交換ではまず、関西地区会員から、「所得・雇用環境は全国で最も厳しく、消費は低迷している。民間サイドの今後の課題は、産学連携による新産業・新事業の創造、外資系企業の誘致と考える」(柿本寿明・日本総合研究所理事長)との説明があった。また、都市再生問題について、吉田二郎・南海電気鉄道会長は、「民間の活力を引き出すため民間事業を支援する積極的な施策や税制の優遇策を講じ、需要喚起が必要」と指摘した。

三洋電機の桑野幸徳社長は、技術開発・研究開発強化のため、「忘れてならないのは大学と国の役割」と強調。具体的に、大学は、新製品・新事業の種となる新技術の開発を進め、国には、税制面での優遇策などで支援願いたい、と語った。

続いて、家次恒・シスメックス社長は、技術革新による産業の高度化に関し、神戸医療産業都市構想を説明。「経済特区認定を受け、産学官の連携で医療産業クラスター形成を図りたい。アジアのメディカルセンターをめざしたい」と語った。

また、TOWA社長の奥田貞人社長も、中堅・中小企業の立場から技術開発、産学官の連携強化について所見を述べ、「中堅・中小企業では新技術開発や事業化を自前で実施するだけの人材や資金などの体力がない。基礎研究や実用化研究を大学に補完してもらうことが多い。そのため、大学と企業をつなぐ地域組織の存在が必要」との考えを示した。

自由懇談

自由懇談では、秋山喜久関西電力会長が、「活力ある日本実現へビジョンの実現を望む。今後は、広く国民的合意を形成していくことが重要」と強調した。
懇談ののち、奥田会長は、「都市再生には個々の企業努力が欠かせない。企業の成功の集積が地域活性化につながる」「グローバル競争時代の各国の成長戦略は、新産業の創出や先端技術開発に集約される。日本も決意を新たにその方向に進むべきだ」などと総括した。


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