[ 日本経団連 ] [ 機関誌/出版物 ] [ 経営タイムス ]

経営タイムス No.2687 (2003年8月7日)

日本経団連、「企業と防災」でシンポジウム開催

−内閣府と共催 、今後の方向性などを探る


日本経団連(奥田碩会長)は7月29日、東京・大手町の経団連会館で内閣府と共催による「企業と防災に関するシンポジウム」を開催した。日本経団連の会員企業や団体、関係省庁、地方自治体などから約500名が参加。防災についての基調報告のほか、官庁の担当者や経営者、識者らによるパネルディスカッションを実施。行政と民間双方の協調に基づく災害対応のあり方など、企業と防災の今後の方向性について、意見を交換した。

奥田会長、「官民連携して日本の防災力高める第一歩」

冒頭あいさつで鴻池祥肇・防災担当大臣は、7月27日未明に発生した宮城県北部地震での被害状況や政府の対応を述べるとともに、この危機意識を背景に、一層充実した防災対策の実現に向けて強い意欲を示した。さらに、その実現には、「地域防災に関することなど、企業の役割は大きい」と強調し、企業と防災に関する検討会議や防災対策強化に向けた専門調査会など、政府の取り組みを説明した。
また、鴻池担当相は、政府の中央防災会議で新たに設置される専門調査会について、「民間と市場の力を活かして、防災力を高めていきたい」と述べ、企業と防災の新たな方向性に期待感を示した。

続いてあいさつした奥田会長は、日本経団連が年初に発表した新ビジョンがめざす「行ってみたい、住んでみたい、働いてみたい、投資してみたい」国づくりの実現には、自然災害のリスクを克服することが条件であるとした上で、地震災害が日本経済に与えるダメージを想定して、「地震に強い社会の構築はわが国の最重要課題のひとつ」と語った。
さらに、こうした問題意識をベースに、日本経団連が防災に関する特別懇談会を設け、企業の立場で防災のあり方をとりまとめた「災害に強い社会の構築に向けて」と題する提言(7月24日号既報)を発表したことを報告した。
最後に奥田会長は、同シンポジウムについて、「官民が連携して日本の防災力をさらに高めるための第一歩となる」とあいさつを結んだ。

基調報告では、まず、内閣府の検討会議報告書「企業と防災〜今後の課題と方向性」について、尾見博武・内閣府防災担当政策統括官が説明。日本における海溝型地震の発生メカニズムや統計から見る地震発生率などを概説した後、世界大都市自然災害リスク指数で東京エリアが突出して第1位であることを報告。このことについて尾見統括官は、「国家としてのリスクマネジメント能力が問われる内容である」と危機感を示すとともに、防災力を高めていくには、(1)災害時における企業の地域社会貢献(2)企業連携による防災まちづくり(3)市場の活用(4)企業のリスクマネジメント――などの推進が欠かせないと指摘した。

次に、樋口公啓副会長が、日本経団連の防災に関する特別懇談会でとりまとめた提言「災害に強い社会の構築に向けて」について報告した。樋口副会長は、防災対策の現状を踏まえ、企業が取り組むべきことや行政への要望、NPO等各団体との協働・補完関係の考え方、さらに経済団体が果たすべき役割などについて触れ、防災活動推進の方向性を述べた。

パネル討議で活発な議論展開

パネルディスカッションでは、山崎登・NHK解説委員をコーディネーターに、樋口副会長、福澤武・大手町・丸の内・有楽町地区再開発計画推進協議会長、白石真澄・東洋大学経済学部助教授、尾見統括官ら4氏がパネリストとして登壇。防災に対する国の問題意識、企業と自治体の連携のあり方、企業が地域になすべきこと、大丸有(大手町・丸の内・有楽町地区)における防災隣組の動向、災害時における帰宅困難者問題、耐震建築に対する減税要望――など、さまざまな課題について活発な議論を繰り広げた。
その中で、「建物などへの防災投資や徹底したリスクマネジメントは、結果的には企業価値の増大につながる」と、パネリスト全員一致の見解を示し、企業が地域で果たす役割の重要性を再確認した。

最後に行われた参加者との質疑・意見交換では、「防災に対するリスクマネジメントの策定や啓蒙などを、社会システムにしっかりと組み込んでいく必要性があるのではないか」との意見があがった。これに対して、樋口副会長は、「この意見は大変重要なことだ。日本経団連としても、提言という形で終わらせることなく、防災対策進展に一層努めていきたい」と応えた。


日本語のトップページ