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経営タイムス No.2699 (2003年11月13日)

第40回日米財界人会議開く

−奥田日本経団連会長がスピーチ「日本の政治経済状況」


第40回日米財界人会議が2日、3日の両日、アメリカ・ワシントンで開催され、日米両国の財界首脳が経済問題などについて意見を交換した。日本経団連からは、奥田碩会長はじめ、西室泰三副会長らが出席。奥田会長は「日本の政治経済状況」をテーマにスピーチを行った。同スピーチの概要は、次のとおり。

■ 日本経済の状況と求められる構造改革の加速

日本経済にも、明るさが見え始めてきた。企業の設備投資は増加基調を続け、株価の回復により、金融面での不透明感も大幅に後退、個人消費への好影響も期待される。
このように、足元の景気は回復基調にはあるが、足取りは堅実ではない。その背景にはさまざまな環境変化の中で、日本の経済・社会システムが、有効に機能しなくなっている事実がある。日本が持続的経済成長を遂げるためには、官民が協力して経済・社会システムの構造改革を推進し、「民主導・自律型の経済社会」を実現することが不可欠である。そのためには3つの重点課題がある。

第1は、日本企業がグローバルな競争を勝ち抜くための基盤強化である。税制面では、法人税負担のさらなる軽減に向けて努力する必要がある。また、技術革新の促進も重要であり、産官学の連携を強化し、新技術を産業化に繋げていく必要がある。
第2は、企業が創意工夫を活かして自由に活動を行うための環境整備である。官主導社会から脱却し、個人や企業が新事業や雇用を生み出す社会を実現するために、規制改革や構造改革特区の活用を大胆に推進し、企業が競争力ある製品やサービスを自由に提供できるようにする必要がある。
第3は、国民の将来不安を払拭することである。そのために、社会保障制度や財政を、経済活力を殺がず、長期的に持続可能な制度に再構築する必要がある。将来における潜在的国民負担率を50%以内に抑制するために国・地方の行財政改革により、歳出を抜本的に削減するとともに、社会保障の給付と負担、政府の財源について、三位一体で抜本的な改革を実現しなければならない。

■ 求められる政治と経済の協力関係

「民主導・自律型」の経済社会を実現するには、政治の強いリーダーシップが不可欠である。日本経団連では改革を加速するため、政治に対し大いにモノを申すとともに、改革に真摯に取り組む政党に対しては、応分の協力を行いたいと考えている。具体的には、経済界として実現させたい10項目の「優先政策事項」を示し、これに基づき各政党の政策や取り組みを評価して、会員企業が自主的に政治寄付をする際の判断材料にしていただきたい。政策本位に基づく政党寄付は、政策本位の政治の実現に貢献するだろう。

■ グローバルな課題への対応

第1は、WTO新ラウンド交渉を通じた多角的な貿易・投資自由化の推進である。カンクン閣僚会議は閣僚宣言を採択できずに終わったが、当初の期限内合意をめざし、先進国は建設的な歩み寄りを図り、途上国の理解と参加を得る努力を続けることが必要である。
第2は、自由貿易協定(FTA)を通じた自由化の推進である。FTAへの対応が遅れているわが国は今後、FTAへの取り組みを強化していくことが重要と考える。貿易・投資の自由化を進める上で求められる国内構造改革も検討していきたい。
第3の課題は、国際会計基準への取り組みである。国際会計基準審議会(IASB)がめざしている、世界の会計基準統一化への動きは、理想としては望ましいが、資本市場の制度や会社法制・税制が各国で異なることを前提にすると、当面は日米欧が、それぞれの会計基準を相互に承認する体制を構築することが重要である。この分野で日米経済界が連携していくことを提案したい。


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