[ 日本経団連 ] [ 機関誌/出版物 ] [ 経営タイムス ]

経営タイムス No.2722 (2004年5月20日)

日本経団連、企業行動憲章を改定

−会員企業のCSRへの自主的取り組み、さらに推進へ


日本経団連(奥田碩会長)は18日、企業行動憲章の改定を行ったと発表した。日本経団連は2月に発表した「企業の社会的責任推進にあたっての基本的考え方」2月26日号既報)で、(1)企業の社会的責任(CSR)は規格化・法制化に馴染まない (2)企業行動憲章を見直してCSR指針とする――ことを表明。それを受けて、企業行動憲章の改定作業を進め、4月21日に企業行動委員会(武田國男委員長、大歳卓麻共同委員長)と社会貢献推進委員会(池田守男委員長)の合同委員会を開催、今回の改定をとりまとめた。記者会見した池田守男評議員会副議長・社会貢献推進委員長は、CSRは企業の自主的取り組みで推進すべきとの考えを示すとともに、「企業行動憲章の枠組みによって会員企業のCSRへの自主的な取り組みをさらに推進することが、今回の改定の趣旨である」と説明した。

憲章改定の背景には、CSRへの取り組みに対する国際的な関心の高まりがある。ISO(国際標準化機構)が来月6月に、CSRの国際規格を作成するか否かを決定するが、CSRは本来、企業の自主的な取り組みによって推進すべき分野であることから、企業行動憲章の枠組みによって会員企業のCSRへの自主的な取り組みをさらに推進することが、今回の改定の趣旨。10カ条からなる企業行動憲章はもともと、消費者・ユーザー、市場、株主、従業員、環境、社会貢献など、CSRで求められるステークホルダーとの関係を網羅しており、実質的なCSR憲章となっている上、会員企業の申し合わせであることから、各社が自社の行動基準を策定・運用する際の目安となっている。

そこで今回の改定では、本文についてはCSRの観点から重要なポイントの修正を行ったほか、新たに設けた「序文」において、CSRへの取り組みが重要になってきた背景や、日本経団連が考えるCSRの構成要素を説明している。
あわせて、企業行動憲章の精神を自主的に実践していく上で必要とされる項目の例示として、「実行の手引きの要点」を発表。実行の手引き自体は、来月6月に発表する予定となっている。

企業行動憲章の主な改正点

企業行動憲章の主な改正点は次のとおり。

【序文】

新たに設けた序文では、日本経団連のこれまでの取り組みを説明した上で、CSRへの取り組みに関する国際的な関心の高まりやグローバル化の進展などに伴って企業に一層の取り組みが期待されている課題や、日本企業の実績について言及。
また、CSRの遂行の基本は法令順守にあることを確認しつつ、企業の自主的かつ多様な取り組みで進められるべきものであることを指摘した上で、会員企業は、企業行動憲章の精神を尊重し、自主的に実践していくことを申し合わせることとしている。

【本文】

○前文

「持続可能な社会の創造に向けて自主的に行動する」ことを明記し、社会に積極的に貢献する姿勢を明確化。さらに、「人権を尊重」することを明記した。

○第1条

情報化やIT化に対応して、「個人情報・顧客情報の保護」を追加するとともに、消費者・顧客の信頼だけでなく「満足」も獲得することを追加し、重要なステークホルダーである消費者・顧客との良好な関係づくりに、より積極的に取り組むことを表現した。

○第2条

「適正な取引」を追加した。

○第4条

CSRにおいて重要なステークホルダーとして位置付けられている従業員との関係は、これまでの第6条から第4条に移動し重要性を強調。また、従業員の「多様性」の尊重を追加し、性別や人種、障害等の相違を超えて従業員が活躍できる職場づくりの姿勢を明確にした。

○第5条

環境問題は企業にとっての課題であるだけでなく、「人類共通の課題」と認識して積極的に取り組むとの表現にした。

○第8条

グローバル化への対応として、これまでの「海外」との表現を「国際的な事業活動」に変更するとともに、人権や環境への取り組みなどを視野に入れて、「国際ルールや現地の法律の順守」を挿入。

○第9条

経営理念や行動規範の「グループ企業や取引先への周知」を明記した。


日本語のトップページ