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経営タイムス No.2726 (2004年6月17日)

第92回ILO総会開幕

−奥田会長代表演説、グローバル化時代の企業の役割を強調


ILO(国際労働機関)の第92回総会が1日、スイス・ジュネーブで開幕、17日までの日程で、ILOの今後の活動のあり方などについて議論を行う。日本経団連は奥田碩会長を代表とする7名の日本使用者代表団を派遣。奥田会長は11日の代表演説の中で、雇用の創出やディーセント・ワーク(働きがいのある人間的な仕事)実現の源泉として、企業の成長が重要であると指摘、ILOとしても、企業をサポートしていく新しい発想が必要であることを強調した。

今回の総会では、雇用問題を世界の安定のために不可欠な要素として位置づけた「グローバル化の社会的側面に関する世界委員会報告」を受け、ILOの今後の活動のあり方について各国の政労使代表が見解を述べた。
また、7日の特別セッションでは、世界委員会の共同議長を務めたフィンランドのハローネン大統領と、タンザニアのムパカ大統領が、公正なグローバル化実現のための国内・国際両レベルのガバナンスの改善を説いた報告書の趣旨を説明。ブルガリアのパバノフ大統領、ニュージーランドのクラーク首相も加わって、それぞれの国におけるグローバル化への対応や取り組みを紹介した。
ソマビアILO事務局長は、世界委員会報告に基づき、ILOが取り組むべき課題として、ディーセント・ワークをグローバルな目標にすることや政労使三者構成主義をグローバル化改善に活用することなどを挙げた。

こうした中、11日に代表演説を行った奥田会長は、雇用の創出やディーセント・ワーク実現の源泉として企業成長の重要性を説き、ILOとしても、企業による富の創出プロセスについて理解を深め、企業をサポートしていくという新しい発想が必要であると主張した。あわせて、企業自身も社会で果たす大きな役割を認識して責任ある行動をとっていくべきとした上で、日本経団連が企業行動憲章を改定し、企業の社会的責任への自主的な取り組みを推進していることを紹介した。
また、企業経営における「選択と集中」に倣い、ILOのもてる資源や得意分野に照らして、雇用創出の核となる政府の政策構築能力向上支援や企業開発、人材育成などを最重要課題としていくことをILOに求めた。

技術議題の審議状況

このほか、総会で行われた各技術議題の審議状況は次のとおり。

第4議題「人的資源養成及び開発」(基準設定・第2次討議)

教育訓練に関する第150号勧告(1975年採択)を、経済のグローバル化や技術革新を背景とした社会経済の変化などに対応した実用的なものにするため、改訂作業を行っている。
織り込むべき基本的な考え方は、昨年の第1次討議において大部分議論済みとの政労使共通認識のもと、ILO事務局作成の勧告案文言の重複や反復を修正し、いかにわかりやすい文書にするかという点に議論を費やしてきた。しかし、南米諸国政府と労働側から「教育訓練を有効に実施するためには、社会的対話を超えた、労使の『団体交渉』が必要である」との勧告案修正が提示され、現在この修正案をめぐり労使間で激しい攻防を展開している。

第5議題「漁業分野における包括的国際基準」(基準設定・第1次討議)

数十年前に採択された漁業分野における既存の7つの条約・勧告に代わる、時代に適した基準の設定をめざしている。
各国の漁業の実態や、先進国と開発途上国の格差を勘案した上で、漁業分野における包括的な労働条件の向上をめざす条約こそが、より多くの国に批准され得るとの基本的な考え方では政労使の一致が見られるものの、具体的な結論案の修文作業では、政労使間の基本的な考えの相違が浮き彫りとなっている。
特に、条約の基本となる「適用範囲」について、使用者側は「すべての漁船員の労働条件向上をめざすためには漁船の分類化は不適切」とする一方で、労働者側は「漁船を分類化して大型漁船には海運労働条約を適用し、小型漁船には当該条約を適用する」ことを求めており、連日深夜まで討議が続けられている。

第6議題「移民労働者」(統合的アプローチに基づく一般討議)

経済のグローバル化進展の下、移民労働者が増加し、その形態も多様化していることに伴い、移民労働者の権利保護への懸念も増大していることから、こうした移民労働問題に対応するためのILOの行動計画を策定することを目的としている。
使用者側は、複雑な様相をもつ移民労働に関する新しい文書を策定することには反対し、ILOの役割は情報収集や技術協力、社会的対話の促進であることを主張した。
一般討論を経てまとまった結論案に織り込まれた行動計画は、(1)拘束力のない多国間フレームワークを構築する (2)新しい文書の策定ではなく既存関連条約の適用を推進する (3)移民労働に関する情報を充実させる (4)社会的パートナーとの社会的対話を促進する――といった内容となっている。


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