日本経団連タイムス No.2728 (2004年7月1日)

日本経団連、「企業行動憲章実行の手引き」改訂

−個人・顧客情報の保護など/CSRの視点で修正・追加


日本経団連(奥田碩会長)は6月22日、「企業行動憲章実行の手引き」<PDF>を改訂した。実行の手引きは、企業行動憲章(全文別掲)の精神を、各企業が自主的に実行していく際の参考資料という位置付け。6月7日に開催した企業行動委員会(武田國男委員長、大歳卓麻共同委員長)と社会貢献推進委員会(池田守男委員長)の合同委員会でとりまとめ、6月22日の理事会で承認した。今回の改訂は、主として企業の社会的責任(CSR)の視点から行ったものであり、企業行動憲章本文(詳細5月20日号既報)の改定に伴う内容の修正・追加となっている。

企業行動委、社会貢献推進委が合同でとりまとめ

今回の「実行の手引き」の主な改訂ポイントはまず、消費者との関係に関する1条では、昨年5月に成立した「個人情報保護法」を受けて、個人情報や顧客情報の保護に関する記述を追加している。

市場と政治・行政との関わりに関する2条では、社会貢献の一環としての政治寄付の実施について書き加えている。

株主や社会との関わりに関する3条では、企業の競争力を高める上でも、社会との双方向のコミュニケーションが重要であるとの記述を追加している。

従業員に関する4条では、「人間尊重の経営」という考えを打ち出すとともに、新しい内容として、途上国において問題となっている児童労働・強制労働の禁止にも言及している。

環境問題への取り組みに関する5条では、「環境問題は人類共通の課題である」との基本的な考え方に従って、記述を充実。

社会貢献活動に関する6条では、全体としてCSRの視点から、一層能動的な企業の姿勢が伝わるように書き換えている。特に、NPOやNGOとの連携について、社会的な問題の効果的な解決という側面だけでなく、社会の賛同と共鳴を確かめる作業であるとの記述を追加している。

国際的な事業活動に関する8条では、新しい内容として、「現地取引先に対しても、自社の経営理念や行動規範を示し、社会的責任の遂行に向けた姿勢を理解してもらう」との記述を書き加えている。


企業行動憲章
―社会の信頼と共感を得るために―

2004年5月18日改定

企業は、公正な競争を通じて利潤を追求するという経済的主体であると同時に、広く社会にとって有用な存在でなければならない。

そのため企業は、次の10原則に基づき、国の内外を問わず、人権を尊重し、関係法令、国際ルールおよびその精神を順守するとともに、社会的良識をもって、持続可能な社会の創造に向けて自主的に行動する。

  1. 社会的に有用な製品・サービスを安全性や個人情報・顧客情報の保護に十分配慮して開発、提供し、消費者・顧客の満足と信頼を獲得する。

  2. 公正、透明、自由な競争ならびに適正な取引を行う。また、政治、行政との健全かつ正常な関係を保つ。

  3. 株主はもとより、広く社会とのコミュニケーションを行い、企業情報を積極的かつ公正に開示する。

  4. 従業員の多様性、人格、個性を尊重するとともに、安全で働きやすい環境を確保し、ゆとりと豊かさを実現する。

  5. 環境問題への取り組みは人類共通の課題であり、企業の存在と活動に必須の要件であることを認識し、自主的、積極的に行動する。

  6. 「良き企業市民」として、積極的に社会貢献活動を行う。

  7. 市民社会の秩序や安全に脅威を与える反社会的勢力および団体とは断固として対決する。

  8. 国際的な事業活動においては、国際ルールや現地の法律の順守はもとより、現地の文化や慣習を尊重し、その発展に貢献する経営を行う。

  9. 経営トップは、本憲章の精神の実現が自らの役割であることを認識し、率先垂範の上、社内に徹底するとともに、グループ企業や取引先に周知させる。また、社内外の声を常時把握し、実効ある社内体制の整備を行うとともに、企業倫理の徹底を図る。

  10. 本憲章に反するような事態が発生したときには、経営トップ自らが問題解決にあたる姿勢を内外に明らかにし、原因究明、再発防止に努める。また、社会への迅速かつ的確な情報の公開と説明責任を遂行し、権限と責任を明確にした上、自らを含めて厳正な処分を行う。

【社会本部企業倫理担当】
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