日本経団連タイムス No.2739 (2004年9月23日)

日本経団連、新ビジョン・シミュレーションの再試算結果発表

−財政・社会保障の持続可能性、諸改革後も確保は困難 


日本経団連は13日、昨年1月に発表した新ビジョン『活力と魅力溢れる日本をめざして』で示したシミュレーションの再試算結果を発表した。昨年発表した新ビジョンでは、財政・社会保障・税制の中長期的展望に関するシミュレーションを提示したが、その後の年金制度改革や、財政健全化に向けた政府方針を踏まえ、今回、「非改革ケース」と「改革ケース〔1〕〜〔3〕」の4通りの再試算を実施した。その結果、最近の諸改革を踏まえても、財政・社会保障の持続可能性は確保されず、さらなる歳出・給付削減や増税が不可避であることが明らかになった。なお、今回の再試算結果の全文は、日本経団連ホームページ(http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2004/071.pdf)からダウンロードできるので、ご参照いただきたい。

1.試算方法(日本経団連マクロ計量モデルの概要)

今回の再試算にあたって、昨年の新ビジョンの際に日本経団連事務局が作成したマクロ計量モデルを更新した(過去20年前後の経済指標や財政統計に基づく方程式94本で構成)。
同モデルは、労働力人口やTFP(全要素生産性)などから、2025年度までの潜在成長力を見通すとともに、経済と財政・社会保障の相互依存関係、例えば、税・社会保障負担の大幅な引き上げや財政事情の極端な悪化が経済成長を阻害することや、今後の経済成長次第では、財政や社会保障の持続可能性も大きく異なってくることなども考慮している。

2.試算結果

(1)非改革ケース

現行の諸制度や、これまでに政府が示した方針を前提としたケースである。具体的には、経済財政諮問会議の「改革と展望」や「骨太方針」にならって、国・地方政府の歳出のGDP比を一定とし、社会保障については、今回の年金制度改革など、現在見通されている給付水準を維持する一方、歳入面では増税を想定しない。以上の前提で試算すると、2025年度の政府債務残高はGDPの5倍近くまで膨れ上がり、社会保障も大幅な給付超過が続くこととなる。
このように、「非改革ケース」では、財政・社会保障が破綻状態となり、現実的な選択肢とならないことから、3通りの改革ケースを用意した。

(2)改革ケース〔1〕

増税を行わず、歳出削減や給付抑制のみによって、財政・社会保障のバランスを確保するケースである。この場合、国・地方財政の規模は2025年度時点で、「非改革ケース」の約半分と、非常に厳しい歳出カットを行わなければならず、社会保障についても、医療給付を約2割減らす必要がある。

(3)改革ケース〔2〕

歳出・給付の抑制とあわせて、消費税率の引き上げを実施するケースである。また、日本経団連の提言に基づき、年金保険料率の上限を15%に想定している。この場合、消費税率を現在の5%から段階的に16%まで引き上げる必要はあるが、「改革ケース〔1〕」に比べると、歳出・給付の抑制は少なくてすむ。

(4)改革ケース〔3〕

「改革ケース〔2〕」をベースに、消費税率の引き上げ方を変えたケースである。消費税率を2007年度に10%とした後、毎年1%ずつ引き上げると、引き上げのペースが「改革ケース〔2〕」よりも若干早まるため、最終的な税率を15%にとどめることができる。

【経済本部経済政策担当】
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