日本経団連タイムス No.2749 (2004年12月9日)

財務省との意見交換会を開催

−財政改革や税制改正など、当面の諸課題で論議


日本経団連は11月29日、都内のホテルで財務省との意見交換会を開催した。財務省からは谷垣禎一大臣、田野瀬良太郎副大臣、上田勇副大臣、倉田雅年大臣政務官、段本幸男大臣政務官らが、日本経団連からは奥田碩会長、千速晃副会長、西室泰三副会長、御手洗冨士夫副会長、三木繁光副会長、西岡喬副会長、出井伸之副会長、武田國男副会長、米倉弘昌副会長、勝俣恒久副会長、櫻井孝頴評議員会副議長、丹羽宇一郎税制委員会共同委員長らが出席。財政改革や税制改正をめぐる当面の諸課題について、意見を交換した。

会合の冒頭、奥田会長は、日本が先進国中最悪のGDP比150%近い政府債務残高を抱えるという厳しい財政状況にあることから、今後の財政や税制、予算編成については難しい舵取りになると述べた上で、今後の財政のあり方などについて、忌憚のない意見交換をしたいとあいさつした。

続いて、谷垣財務相はあいさつの中で、「財政出動に頼らない、民需主導の景気回復が続いている」とした上で、「回復の動きを日本全体に浸透させるためにも、構造改革を今後も強力に推進する必要がある」と語った。また、持続的な成長の実現には財政の持続可能性の確保が重要であるとし、歳出・歳入両面からバランスのとれた財政構造改革の推進が必要であり、特に経済の「身の丈」にあった、持続可能な社会保障制度の確立が重要との考えを示した。
さらに税制改革について谷垣財務相は、定率減税の見直しと個人所得課税の抜本的見直しの検討を課題として挙げるとともに、消費税について、国民的な議論を進めていく必要があると述べた。

◆意見交換

続いて意見交換に移り、まず日本経団連側が意見表明を行った。
財政改革について西室副会長は、現状のままでいくと、2025年度の政府債務残高はGDP比の約5倍にまで拡大するとの日本経団連のシミュレーションの再試算結果<PDF>を披露し、歳出の合理化と消費税を基幹税とする新たな歳入構造の構築の必要性を説いた。さらに、法人税率の引き下げや科学技術に対する予算の重点配分、減価償却制度の見直し、少子化対策の推進を求めた。

次に、税制委員会の丹羽共同委員長が、平成17年度税制改正への具体的要望として、(1)特別法人税の撤廃 (2)環境税の導入反対 (3)日本型LLC(有限責任会社)税制への早期取り組み――を挙げ、財務省側にその検討を呼びかけた。

千速副会長は、経済界が環境税の導入に強く反対していることをあらためて表明。その理由として、(1)企業の国際競争力に深刻な影響を与えかねない (2)増税なき温暖化対策の可能性を真剣に検討すべき (3)石油石炭税との二重課税の問題が生じる――ことなどを指摘。その上で、「国民、企業、政府が一体となって真剣に努力すれば環境税はなくとも京都議定書の約束は達成できる」と訴えた。

これらの意見を受けて財務省側は、「今後の財政構造を考え、将来どのように負担を分かち合うかを考えると、消費税の問題は大事」「環境税は環境政策全体の中での位置づけをきちんと議論しなければならない」「減価償却制度の見直しについては、十分な検討が必要である」「新しい法人形態としてのLLCについては、適正な課税関係となるよう検討していかなくてはならない」と応えた。

さらに、日本経団連側から、「定率減税は所得税の見直しと一体として考えてほしい」(丹羽共同委員長)、「減価償却制度の見直しは古い産業から新しい産業へ転換させるための投資と考えるべき」(出井副会長)、「防衛費やODAは、今後の日本の形を考える上で重要な予算である」(奥田会長)、「防衛については、防衛技術が民生技術の基盤になっていることを理解した上で予算配分してほしい」(西岡副会長)などの意見が出された。

これらの意見に対して谷垣財務相は、所得税の見直しについては、「定率減税を段階的に廃止した上で設計し直す必要がある」と述べた。
また、ODAについては、ODAの効率的な使い方を議論するなどして、メリハリづけをする余地が残っているのではないかとの考えを示した。
さらに防衛費については、「冷戦の崩壊によって、どのような防衛力を整備するのか考える必要がある」と語った。

【経済本部経済政策担当】
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