日本経団連タイムス No.2764 (2005年4月21日)

経済政策委員会を開催

−日本経済研究センター・小島会長「わが国経済におけるグローバル化の現状と課題」で講演


日本経団連の経済政策委員会(千速晃委員長、井口武雄共同委員長)は6日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、日本経済研究センターの小島明会長から、「わが国経済におけるグローバル化の現状と課題」についての講演を聴取した。

小島会長は「現在のわが国経済は、バブル崩壊後の低迷期をようやく脱し、活力と自信を取り戻しつつある。特に企業の収益力が強化され、海外投資家の評価も高まっている」と指摘。日本経済が危機の発生(crisis)、応急処置(response)、事態の改善(improve)、慢心(complacency)を繰り返す、いわゆる「CRICサイクル」から脱しつつあると分析した。

他方、冷戦以降の政治経済情勢を振り返り、「人や資本の移動が飛躍的に拡大し、グローバルな大競争と大分業が展開される中で、わが国経済のグローバル化は相対的に遅れたのではないか」との見方を披露した。
その例として、日本の総固定資本形成に占める直接投資の割合が、諸外国に比べて極めて低く、「閉鎖型」「自己完結型」の経済を構築していることを指摘。これに対し、米国や中国、インド、ASEAN諸国などは自国市場を開放し、「生産能力の輸入」と捉えることができる対内直接投資を積極的に受け入れることによって、成長力を高めてきたと述べた。
日本のグローバル化が遅れた原因としては、1990年代以降、バブル崩壊や不安定な政権、官僚批判の高まり、自然災害やテロ事件などといった国内問題への対応に忙殺されたことを挙げた。
その上で、日本経済が活力を回復しつつある今日、世界経済における日本の位置づけを把握しながら経済運営を行うことが一層重要となっていると強調した。

最後に小島会長は、日本人が国際会議への出席に消極的になっていることに対し、「内向き志向の表れ」として懸念を表明。グローバルな情報発信の場である国際会議に、経済界を含め、日本が積極的に参加することを期待すると語った。

なお当日は、同委員会企画部会(築舘勝利部会長)が中心となって取りまとめた報告書案(「グローバル化が進む非製造業の新たな展開―これからの企業戦略II―」)の審議を行い、了承を得た。

【経済本部経済政策担当】
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