日本経団連タイムス No.2776 (2005年7月21日)

第38回東北地方経済懇談会を開催

−民主導・民自律型経済社会実現と東北産業経済活動化へ意見交換


日本経団連(奥田碩会長)と東北経済連合会(東経連、幕田圭一会長)は13日、仙台市内で第38回東北地方経済懇談会を開催した。同懇談会には、奥田会長はじめ日本経団連の首脳役員、東経連会員など約260名が参加。「民主導・民自律型経済社会の実現と東北産業経済の活性化に向けて」を基本テーマに、構造改革特区・規制緩和などによる東北産業経済の活性化や広域観光事業の展開、国際交流事業への取り組み、社会資本の整備など、日本と東北の抱える諸課題について意見を交換した。

開会あいさつした東経連の幕田会長は、他地域に比べて景況感に出遅れが見られる東北の景気回復を確かなものにし、「生き生き元気良く暮らせる東北」を実現するため、東北経済界として新しい時代潮流に対応した経営改革や業績向上に、積極的に取り組んでいくことが重要であると指摘。2005年度は、「東北の総合力発揮に向けて〜東北産業経済の活性化と広域連携の推進〜」をモットーに、(1)産学官連携を軸とした地域産業の国際競争力の強化と地域密着型産業の育成 (2)東北の総合力発揮に向けた広域連携の推進 (3)広域連携の基盤となる基礎的社会資本の整備促進――を柱として諸事業に取り組んでいると述べた。

続いてあいさつした奥田会長はまず、現在の景気について先行きに明るさが増しつつあるとの見方を示した上で、さらなる内需喚起によって安定成長をめざしていかなければならないことを強調。変化を先取りした経営革新に積極果敢に取り組んでいくとともに、「民主導・民自律型の経済社会」の実現に向けて改革の動きをリードしていく決意を示した。また、奥田会長は観光問題について言及した中で、「ゾーンでとらえる観光戦略」の必要性に触れ、東北各県が一体となって国内外の観光客誘致に向けた宣伝活動を展開していることを評価、豊富な観光資源を持つ東北が、観光振興策を一層強力に展開していくことを提案した。

■活動報告

活動報告ではまず、日本経団連の三木繁光副会長が国の基本問題について、憲法改正をめぐる国会や政党の動きなどを紹介するとともに、日本経団連が1月に公表した「わが国の基本問題を考える」1月20日号既報)で示した、めざすべき国家像について説明した。
次に第3期科学技術基本計画の策定に関して、庄山悦彦副会長が、日本経団連から政府に対し、「科学技術の戦略的重点化」「産学協働による卓越した研究教育拠点(COE)の創設」「政府研究開発投資額の拡充」などについて働きかけていることを紹介。また、住宅政策に関する取り組みについては和田紀夫副会長が、良質な住宅・住環境を社会的資産として位置付けることや、美しい街づくり、暮らしにあわせた住まい方の実現を基本理念とする「住宅・街づくり基本法」を制定すべきとの考えを示した。

続いて、東経連側から、まず、齋藤育夫副会長が、東北産業経済の活性化に向けた取り組みについて報告した。齋藤副会長は、東北に独自の技術を持つ新しい企業を育て、既存企業から新規事業分野を生み出すため、(1)地域ベンチャーファンドを通じた優良企業の発掘と育成 (2)大学や公設研究機関のシーズの事業化への取り組み (3)東経連が事務局を務める「東北ベンチャーランド推進センター」活動――などを実施していることを紹介し、支援と協力を求めた。
次いで広域観光事業への取り組みについて、勝股康行副会長が説明。東北の官民が一体となって発足させた東北広域観光推進協議会が、3大都市圏での誘客プロモーション活動や教育旅行誘致事業、国際旅行博への出展、国のビジット・ジャパン・キャンペーンとの連携などを実施していることを紹介した。また東経連としても昨年度、観光文化委員会を設置し積極的に活動を展開していると述べた。
林光男副会長は国際交流事業への取り組みについて、東経連は北東アジア経済圏の形成をにらみ、とりわけ中国東北地方を重要なパートナーと考え、具体的に経済交流活動を展開している――と説明した。また、こうした海外とのビジネス交流を拡大・推進するためには、東北地方の国際コンテナ港湾や国際空港の整備促進、利活用が必要であることを強調した。

■自由討議

自由討議では、東経連側から、(1)構造改革特区・規制緩和による地域経済活性化の動きが展開されており、市場化テストの取り組みも広がっている (2)地域における新産業・新事業の創出のためには、クラスター事業の効率的運営や、技術・経営・マーケティングのリスクの地域経済界の負担が必要である (3)観光事業振興、外国人観光客誘致のためには、東北の魅力を世界に発信し、魅力ある旅行商品を提供しなくてはならない (4)観光振興のために「観光省」を設置するべきである (5)国際交流事業の展開としては、農水産物の輸出や食品加工業の中国進出支援なども含め、中国との経済交流拡大に向けた各種事業にさらに取り組んでいきたい (6)産業活性化や広域連携推進のためには、新幹線や高速道路などの基礎的社会資本の整備が不可欠である。東北地域の高速道路の多くが未完成だが、災害時の代替路確保や緊急医療体制確立に貢献することができる高速道路のネットワーク化が必要である (7)地球環境・エネルギー問題に関する取り組みについては、循環型社会の形成と、そのシステム形成に必須な産業の創生・再生が必要である――などの意見が出され、これらに対する日本経団連のコメントが求められた。

これに対して、日本経団連の柴田昌治副会長、高原慶一朗新産業・新事業委員会共同委員長、三木副会長、西室泰三評議員会副議長、和田副会長から、概ね同感であるとのコメントとともに、日本経団連の考え方を説明した。
続いて奥田会長が総括を行い、地域経済活性化のためには、海外のヒト、モノ、カネを利用する発想が必要であり、既に中国東北部との交流を進めている東北地方は、さらにロシアとの連携も視野に入れるべきであると述べたほか、国と地方の三位一体改革を契機として民主導の地域自立を促進してほしいとの考えを示した。
また奥田会長は、昨今の企業不祥事に触れ、企業倫理徹底の重要性を訴えた。

最後に幕田東経連会長が閉会あいさつを行い、東北地方の産業経済活性化と構造改革に、東北各県が一体となって取り組んでいくとの決意を示した。

【総務本部総務担当】
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