日本経団連タイムス No.2777 (2005年7月28日)

「ベアゼロ・定昇のみ」大勢

−春季労使交渉総括


日本経団連は毎年、その年の春季労使交渉の回答・妥結結果を、大手企業・中小企業別に集計している。今年も、大手企業<PDF>については6月(6月9日号既報)、中小企業<PDF>については7月(7月21日号既報)に最終集計を発表した。そこで、今年の春季労使交渉を総括する。

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日本の景気は、2003年後半より持ち直し傾向を持続してきたが、04年後半から回復のペースが減速し始め、いわゆる「踊り場」の状況に陥った。景気動向指数の一致指数は04年9月より12月まで、4カ月連続で景気回復の分岐点である50を割り込み、春季労使交渉の直前である05年2月も36.4と50を割り込むなど、不安定な状態が続いていた。
政府の経済に対する基調判断も、04年11月以降は、それまでの「景気は、堅調に回復している」から「景気は、このところ一部に弱い動きはみられるが、回復が続いている」へと転換し、この判断基調は05年5月まで続いた。

物価については、企業物価が04年3月より対前年比上昇に転じたが、消費者物価(生鮮食料品除く)は依然として対前年度比マイナス基調が続いており、消費者に近く競争が厳しい産業部門などにおいて、価格転嫁が難しい状況が続いている。また、雇用情勢については、03年前半から始まった失業率の低下基調と有効求人倍率の増加基調が04年以降も持続しているが、今回の景気回復を牽引した大企業・製造業・輸出関連産業のある地域が順調に雇用情勢を改善させた一方、これらの要因がない地域では雇用情勢の改善が進まず、地域の格差は拡大傾向にある。

業績成果は賞与・一時金に反映

日本経団連は04年12月に『2005年版経営労働政策委員会報告』1月1日号既報)を発表し、05年の春季労使交渉における経営側の基本スタンスを示した。同報告では、(1)賃金決定にあたっては、企業の支払能力を示す付加価値生産性(従業員1人当たりが生み出した付加価値)を基準とすべきこと (2)社会保障費などの企業負担の増大が予想される中、現金給与だけでなく、福利厚生費をも含んだ総額人件費管理の観点が重要であること (3)激しい国際競争と先行き不透明な経営環境が見込まれる中では、国際的にすでにトップレベルにある賃金水準のこれ以上の引き上げは困難であること――などの情勢認識を示した。
その上で、今年の賃金決定に対する基本スタンスとして、(1)個別企業においては賃金管理の個別化が進む中では、全従業員の賃金カーブの毎年の一律的底上げという趣旨での「ベースアップ」が機能する余地は乏しい (2)短期的な企業業績の成果については賞与・一時金に反映させるべきである――との考え方を示した。
その結果、個別企業の労使交渉においては、「ベアゼロ・定昇のみ(賃金カーブ維持)」の回答が大勢を占め、日本経団連の調査では、大手企業141社の妥結額平均(加重平均)は5504円、アップ率は1.67%、中小企業612社の妥結額平均(加重平均)は3743円、アップ率は1.47%で、いずれも昨年の最終実績と比べて、ほぼ横ばいという結果となった。
また、収益が好調な企業を中心として短期的な業績は賞与・一時金に反映させており、日本経団連の調査によると、203社の夏季賞与・一時金の妥結額平均は85万9097円、前年夏季比3.63%で、昨年夏季の最終集計結果を約3万円上回るなど、高水準となった。
ここ数年続いている「賃上げについてはベアゼロ・定昇のみ、企業業績の配分は賞与・一時金で行う」との流れが定着したと言える。

【労働政策本部労政・企画担当】
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