日本経団連タイムス No.2801 (2006年2月16日)

新たな高齢者医療制度で要請

−後期高齢者支援金等の財源・仕組み、「検討対象明文化」など


日本経団連は14日、新たな高齢者医療制度の抱える問題点を連合および健保連と共同で確認するとともに、要請書を与党議員に届けた。今後はさらに、要請の趣旨を関係要路に説明し、理解を求めていく方向である。

医療制度改革関連法案は10日に閣議決定が行われ、今後、通常国会において審議が予定されている。同法案では高齢者医療制度について「施行後5年を目途として制度全般に関して検討が加えられ」必要な措置を行うと規定されている。今般の申し入れは、(1)制度検討はできる限り早期に、遅くとも医療費適正化計画の進捗状況の評価時期(2010年度)には行うこと(2)後期高齢者支援金等の財源・仕組みについて検討対象とする旨を明文化すること――を要請するもの。

08年度施行予定の高齢者医療制度については、現行の老人保健制度や退職者医療制度を廃止する形で、給付と負担の関係を明らかにして負担者の納得を得ることが求められていた。しかし、同法案では、前期(65〜74歳)・後期(75歳以上)の年齢区分を設定して制度を複雑化しており、(1)前期高齢者には、各保険者の間の財政調整制度を導入すること(2)後期高齢者を対象に独立した保険制度を創設し、財源となる後期高齢者支援金について稼得能力のない者まで対象としていること(3)廃止が決定していた退職者医療制度は、経過措置とはいえ14年度まで存続させること――など、いくつもの問題点が含まれている。さらに、導入初年度である08年度については制度改革に伴う財政試算が示されているが、それ以降の将来推計がなく、被用者保険における将来の負担増が不明である。このような仕組みは、現役世代および企業にとって納得できるものではなく、制度全般の持続可能性が大いに危惧されるという認識で3団体が一致した。

療養病床再編でも緊急要請

また、日本経団連では、閣議決定前の6日に療養病床再編について緊急要請を取りまとめ、川崎二郎厚生労働大臣に提出した。6年かけて療養病床を15万床に削減するという厚労省の考え方について、与党内の一部に反対する声が上がっていたことから、目標と期限を設定して療養病床の再編が必要である旨を申し入れた。

緊急要請は、(1)医療の必要性に応じて療養病床は再編成し、介護型療養病床については、11年度末までに廃止すること(2)再編後、社会的入院や社会的入所が再発しないような措置を併せて実行すること――を求めている。
日本経団連では、医療の高度化を推進しつつ安心で持続可能な医療制度を構築するために、「政策目標」を設定し、医療費適正化を推進することが不可欠であると考えている。とくに、「社会的入院」「社会的入所」を解消するためには、長期の入院患者や入所者が多い療養病床を再編成し、在宅での療養や介護に転換する必要があることから緊急に要請を行った。

【国民生活本部医療・介護担当】
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