日本経団連タイムス No.2811 (2006年4月27日)

「義務教育改革についての提言」を発表

−学校選択制の全国的導入など提示


日本経団連(奥田碩会長)は18日、「義務教育改革についての提言」を発表した。近年、義務教育をめぐっては政府の審議会等さまざまな改革の議論がされている一方、教育の現場を見ると、習熟度別授業の普及など日本経団連の提言に沿った動きもあるが、全体としてみれば教育改革の足取りは遅く、公立学校への不満や不信が私立志向を高め、塾通いを常態化させている事態は変わっていない。こういった状況を受けて同提言では、学校が自ら学校運営や授業の改善に取り組まざるを得ない環境に整備するため、(1)学校選択制の全国的導入(2)学校評価の実施(3)教育の受け手の選択を反映した学校への予算配分の実現――の3点を中心に取りまとめた。
同提言の概要は次のとおり。

1.学校選択制の全国的導入

学校選択性導入の目的には、「選ばれる学校」に向けた“切磋琢磨”を促進するところにある。
現行の学校教育法では、就学先は、市町村の教育委員会が指定することとなっており、保護者の意見は「聞くことができる」とされるに止まっている。学校選択制の全国的導入に向けては、教育の受け手の希望をあらかじめ調査し、原則として、その希望が最大限尊重されるよう、学校教育法を改正すべきである。

2.学校評価

教育の受け手に学校選択の際の、参考材料を提供するという点から、(1)評価項目に一定の基準を設けるなど、学校の取り組みを比較・検証可能なものとすること(2)保護者や生徒・児童が評価に参加すること――などを提案する。
今年3月に学校評価に関するガイドラインが策定され、学校評価に一定の基準が示されたことは歓迎されるところだが、教育の受け手の評価を積極的に汲み取り、具体的改善に結びつける視点が欠如していることや、学校評価に不可欠な教育活動の成果についての客観データの公表を求めていないことなどの問題がある。このような状況に鑑み、来年度から実施予定の全国学力調査の結果などを学校毎に公表すべきである。

3.教育の受け手の選択を反映した学校への予算配分

現在の学校への予算配分は、学級数や教員数を基準として行われており、「教育の質」や「満足度」などは考慮されていない。
学校運営や授業の改善に、学校が自主的に取り組むことを担保するためには、予算面でも教育の受け手の評価を反映させる必要がある。その上で、学校選択制の導入に加え、学校への予算を、原則として児童・生徒数に応じて配分するよう、見直すべきである。なお、各学校の個別の事情を踏まえて、施設整備・建設費や追加的な交付を決定するといった仕組みの構築にもあわせて取り組むべきである。

【社会本部人材育成担当】
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