日本経団連タイムス No.2816 (2006年6月8日)

関西会員懇談会を開催

−「人間力の発揮を通じて時代を切り拓く」テーマに


日本経団連(御手洗冨士夫会長)は1日、大阪市内で関西会員懇談会を開催した。懇談会には、御手洗会長、宮原賢次副会長、西岡喬副会長、出井伸之副会長、米倉弘昌副会長、勝俣恒久副会長、江頭邦雄副会長をはじめ、関西地区会員代表者ら約300名が出席し、経済界が直面する課題について意見を交換した。

御手洗会長「希望の国」創りへ抱負

冒頭、あいさつした御手洗会長は、小泉内閣による構造改革の進展と、企業による経営革新の努力によって復活しつつある日本経済の活力を、さらに強化するとともに、日本が魅力あふれる「希望の国」となるよう、社会システムも含めたイノベーションに全力を挙げて取り組んでいきたいと抱負を語った。
具体的には、「科学技術創造立国」構想を推し進め、夢のある国家プロジェクトをリード役として、新商品や新サービスなどのイノベーションを継続的に実現していくシステムを整備していくことが重要と述べたほか、社会のシステムやその根底にある国民意識についても自立に向けて転換していく必要があると強調。自立自助の精神とともに、「他人を尊重し、思いやる心」も併せて涵養していくべきとの認識を示した。
最後に、「希望の国」を創るべく新たにビジョンをまとめる意向を明らかにした上で、関西地区会員からも積極的な意見を寄せてほしいと呼びかけた。

続いて、宮原副会長から「経済法制改革をめぐる最近の動き」、西岡副会長から「海外経済協力のあり方」、米倉副会長から「経済連携の推進」について、日本経団連の活動を報告した。

関西地区会員の意見

意見交換では、まず関西地区会員から発言。奥田務・大丸会長は、文化や和の精神など日本のソフトパワーの魅力を、もっと世界の人々に知ってもらう必要があると述べた上で国際観光の推進の必要性を強調。関西では、関西国際観光推進センターを通じ府県の枠を越えた国際観光振興の取り組みが効果を上げていると報告したほか、日本古来の文化芸能の振興の重要性を指摘した。

野村明雄・大阪ガス会長は、公益事業がマネーゲームの舞台となることは許されないと指摘するとともに、倫理観に根ざした企業経営の重要性を訴え、今後は「法令順守の倫理観」から一歩進めた「社会的・公益的な責任を果たす倫理観」の醸成・啓蒙が必要との考えを示した。

松下正幸・松下電器産業副会長からは、「個人の個性や能力を最大限に伸ばす多様性を重視した教育の実現」には教育基本法の改正の早期実現が不可欠とするとともに、「地域の自立を促し、活力を高める」ためにも道州制の導入が必要であり、その推進に向け国の強い姿勢が肝要との認識が示された。

大坪清・レンゴー社長は、自社の資源リサイクルの活動を紹介。古紙を回収し、パッケージング材料に再生する事業を「静脈物流」と名づけ、回収事業は社会の救済策ともなっていることを説明した。また、循環型社会のあり方について言及し、今後企業はいわゆる「動脈物流」の効率化を通じての生産性の向上だけでなく、「静脈物流」のシステム構築にも注力し、「社会全体の生産性向上」をめざすべきであると呼びかけた。

神崎昌久・中山製鋼所社長は、日本は貿易立国としてめざましい経済成長を遂げたが、その反面、精神の空洞化や国家観・倫理観喪失が起きていることを指摘。フランスにおける出生率向上の例が示すように、少子化問題等へ対応する上からも、国家が明確な方向性を示すことが重要と述べた。

白水宏典・ダイハツ工業会長は、日本の製造業の競争力はブルーカラーの質の高さによるところが大きかったと指摘。理数系学生の学力低下を問題提起し、同時に理数系離れも著しいとして、今後も日本が高度な技術産業を常に確立し続けるには、早急に高度技術人材の育成に傾注すべきとの見解を述べた。

出席した副会長の意見

これらに対し、出席した副会長からもそれぞれ意見が述べられた。このうち、勝俣副会長が少子化問題について発言。企業はトップ自らが先頭に立って多様な働き方の整備等に取り組む必要があるとした上で、国・地方自治体をはじめ各主体がそれぞれの役割を果たすとともに、国民的運動を展開することが重要との意向を示した。また、同副会長は資源リサイクルの重要性についても言及した。国際観光の推進について江頭副会長は、「観光立国」に向けた取り組みの重要性を指摘し、日本の魅力を知らしめ、多くの外国人観光客を日本に呼び込むために、海外における広報やプロモーションが必要であるとコメント。教育・人材育成問題については出井副会長が、大学進学時の理系・文系の分け方といった点も含め、時代の変化に合わせ、教育も根本的に見直していくべきと強調。また、若手の起業家や経営者への指導に触れ、日本経団連では、起業創造委員会を設置し、対応していくことを報告した。同副会長は道州制の導入についても言及した。

御手洗会長が意見交換を総括

最後に御手洗会長は、意見交換を総括し、企業倫理の徹底についても触れ、企業不祥事の根絶には経営リーダーの強い意識と具体的な関与が不可欠であると強調した上で、日本経団連の企業行動憲章を参考に、社内の行動を総点検するとともに、風通しの良い組織づくりを進めるよう呼びかけた。また、日本経済のさらなる発展には各地域の活力を高めることが重要として、関西地区の会員との意見交換を一層充実させていきたいとの意向を示した。

【総務本部総務担当】
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