日本経団連タイムス No.2837 (2006年11月16日)

道州制に関する検討会初会合開く

−効果や具体的制度設計検討/来春を目途に提言取りまとめへ


日本経団連(御手洗冨士夫会長)は、行政改革推進委員会(出井伸之委員長、大久保尚武共同委員長)の下に「道州制に関する検討会」を設置し、1日初会合を開催した。日本経団連は9月26日に発表した「新内閣への要望」9月28日号既報)の中で、地域活性化に向けた道州制の導入を求めており、同検討会では、道州制導入の意義や目的について広くコンセンサスを得るとともに、その効果や具体的な制度設計について検討し、来春を目途に提言を取りまとめる予定。

導入への基本的な考え方を小早川・東大教授から聴取

第1回会合には、日本経団連の会員企業から約25名が出席、東京大学の小早川光郎教授から道州制の導入に対する基本的な考え方について説明を受けた。小早川教授はまず、これまでの地方分権改革の流れを説明、「2000年4月の地方分権一括法の施行という第1次地方分権改革により機関委任事務が廃止されて、国から地方への関与は大幅に減少したが、地方が行うべき事務に対する国の関与は依然多く残っている」と述べた。

小早川教授は、「第1次分権改革の後、現在の都道府県は狭く、限られた資源を効果的に分配することができない、あるいは地方分権を行っても、地方に権限の受け皿がないなどの意見を受けて、さらに広域的な行政主体である道州を設置してはどうかとの議論が出てきた。この流れの中で、第27次地方制度調査会では道州制が取り上げられた」と述べた。小早川教授が副委員長を務めた第28次地方制度調査会では、小泉総理(当時)から「道州制のあり方」について諮問されて以降、「積極的にではあるが慎重に議論を進めた」と紹介。「道州制の趣旨は、国と地方および広域自治体と基礎自治体の役割分担を見直して、(1)地方分権を推進して地方自治を強化する(2)自立的で活力ある圏域を実現する(3)国と地方を通じた効率的な行政システムを構築する――ことが目標であり、そのためには、事務権限の仕分けや組織の再編を行うための税財政制度などを実現する必要がある」と述べた。

今後の課題として小早川教授は、地方での住民自治システムや地方公共団体の財政などを指摘。特に財政面では、「国庫補助金や地方交付税によって国が地方間の財政を調整する現在の制度を改編して、国から自治体への税源移譲を総体的に行うことで、地方公共団体が自らの財源で自立的に行政を行えるようにすべきだ」との考えを示した。「現在は交付金削減の議論が先行して税源移譲の議論が進んでいないが、両者を一体的に議論して、地方間の財政を調整する新たな制度を構築する必要がある」と語った。

小早川教授の説明に続いて行われた意見交換では、出席者からアメリカなどの連邦制と道州制との違いに関する質問などが出された。これに対して小早川教授は、欧米諸国の地方制度などの例を紹介した上で、第28次地方制度調査会の答申をもとに、「立法権や司法権までを道州が有する連邦制的な制度を日本に導入することはできないだろう」との見方を示した。

【産業第一本部行革担当】
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