日本経団連タイムス No.2853 (2007年3月29日)

提言「実効ある安全保障貿易管理に向けて制度の再構築を求める」公表

−具体的施策などを提案


日本経団連は20日、提言「実効ある安全保障貿易管理に向けて制度の再構築を求める」を取りまとめ、公表した。

昨今のテロ事件や核拡散への対策の一環として、国連安全保障理事会の決議やワッセナー・アレンジメントにおける国際的な合意に基づき、大量破壊兵器や通常兵器に関連する取引に対する管理を強化する国際的な動きがみられる。わが国でも、2006年春以降、産業構造審議会において、こうした動きに対応する具体的な制度改正につき審議が進められている。
一方、企業の現場からは、こうした安全保障面からの輸出管理が、企業活動に不合理かつ過大な負担とならないよう、簡素でわかりやすい制度にしてほしいという声が以前から寄せられており、日本経団連としても、政府に対し改善を要望してきた経緯がある。
企業活動にとって国際的な平和と安全の確保は極めて重要であり、各企業が法令順守のための体制を整えることは不可欠である。他方、企業活動のグローバル化や国際的な管理強化の流れの中で、関係する企業や管理すべき取引の裾野が拡大しており、現行の複雑な規制体系をそのままにして、新たな規制を接ぎ木していくと、企業の負担が過大となり、国際競争力が損なわれることが懸念される。

そこで提言では、今回の政府による見直しを機に、制度を再構築することを求めており、その際の視点として、(1)安全保障のための貿易管理の重要性がかつてなく高まっていること(2)簡素でわかりやすい制度とすること(3)安全保障と貿易円滑化のバランスに留意すること(4)国際条約や国際合意を基本に諸外国の制度やその運用との調和を図ること――の4点を挙げている。
これらの視点を踏まえ、制度再構築に向けた具体的な施策として、(1)企業の規模にかかわらず、トップから海外子会社を含む現場、継続的取引先等に至るまで管理を徹底できるよう、現在の重層的で複雑な法体系を整理・簡素化すること(2)特に海外子会社、支店等にコンプライアンスを徹底させるため、現行のわが国独自の規制品目項番について、国際的に用いられている規制品目リスト番号を参照する形でハーモナイゼーションを図ること(3)自主管理を確実に行っている企業に対し、従来の包括許可やファスト・トラックに加えて、海外子会社向けの輸出許可申請を不要とする等の優遇措置を拡充すること――を提言している。
これに加え、現在、産業構造審議会で検討されている通常兵器関連キャッチ・オール規制の導入に当たり、対象仕向地を国連武器禁輸国に限定すること、対象品目の範囲や「軍事用途」の定義を限定的かつ明確にすること、規制の発動について、当局によるインフォームがない場合は、原則、許可申請を不要とすること等を求めている。また、大量破壊兵器等関連技術の移転に対する規制については、少なくとも企業内部の情報共有が妨げられることのないよう、実態に即した基準を設けるよう提言している。
最後に、米国から輸出された貨物がさらに第三国に輸出される場合に適用される米国の再輸出規制が、企業に多大なコストを課していることから、最終的には日本からの再輸出を適用除外とすることを求めている。

【国際第一本部貿易投資担当】
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