日本経団連タイムス No.2859 (2007年5月17日)

「わが国国際協力政策に対する提言と新JICAへの期待」公表


日本経団連は15日、「わが国国際協力政策に対する提言と新JICAへの期待」を公表した。

わが国の国際協力をめぐっては、10年連続でODA予算が削減され、わが国の対外影響力の低下が懸念されている。また、アンタイド化などODA事業を推進する環境が悪化しているため、民間企業のODAに対する関心が低下している。

こうした中、昨年5月にODAの司令塔として「海外経済協力会議」が発足、外務省も国際協力に関する企画・立案能力を強化すべく8月に組織改編し、国際協力局を新設した。また、一連の政策金融機関改革の議論を受け、JBIC(国際協力銀行)が国際金融部門と円借款部門に分離されることとなった。前者は、国内向け政策金融を担ってきた各種公庫との統合により新設される日本政策金融公庫の国際金融部門として、JBICの名称を引き続き使用できるかたちで業務を継続する。後者はJICA(国際協力機構)と統合し、円借款・技術協力・無償資金協力の3メニューを一体的に実施し得る援助実施機関(以下、新JICA)として生まれ変わる。これらはいずれも来年10月に発足する。

一方、来年(2008年)は、わが国国際協力にとって重要な年となる。TICAD(アフリカ開発会議)が5月に、G8サミット(主要国首脳会議)が7月に予定されている。わが国の国際協力を官民が協力して推進し、わが国が国際社会において引き続き主要な役割を果たすことが重要である。そこで、今回このタイミングで意見書を作成し、公表することとした。

意見書は、大きく2つの部分から構成されている。第1の部分は「わが国国際協力政策に対する提言」と題し、国際協力に関する日本経団連の基本的考えをまとめている。ここでは、経済成長に資する援助、担い手としての民間の重要性を強調しており、途上国の自立的経済発展を促す「顔の見える援助」、経済・社会インフラを重視する援助の重要性を指摘している。また、民間企業が持続的にODAに関与・参画できるよう、各種の制度改革を実施するよう求めている。さらに、(1)ODAの事業量拡大(2)円借款返済金の有効活用(3)資源・エネルギー確保や地球環境問題解決のためのODAの活用(4)アジアでのわが国ODAの経験をアフリカに広めることの重要性(5)EPA(経済連携協定)促進のためのODAの活用――などもうたっている。

第2部の「新JICAへの期待」では、民間企業の立場から、より具体的な提言を取りまとめている。とりわけ強調しているのは、円借款事業の形成から実施までの期間半減である。円借款については、現在3〜4年、場合によっては7年程度かかることも珍しくない。途上国における開発効果を早期に発現させ、また期間中の各種リスク(政権交代による政策変更、案件優先順位変更、建設費や資材の高騰等)を低減させるため、期間の短縮化とそのための具体的な方策を提案している。そのほか、ドル建て・現地通貨建て借款の創設、STEPと呼ばれるタイド円借款の拡充と部分無償化、無償資金協力の適切なリスク分担など合計7項目にわたって提案している。

日本経団連では今後、意見書の実現に向け、外務省をはじめとする政府・関係機関に働き掛けていく予定である。

【国際第二本部国際協力担当】
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