日本経団連タイムス No.2861 (2007年5月31日)

日本経団連 第6回定時総会

定時総会来賓挨拶


安倍首相
−「官業の民間開放」など4視点から10分野・課題

6月のドイツのハイリゲンダム・サミット、来年の北海道洞爺湖サミットにおいても、地球温暖化問題は、大変重要なテーマとなる。この問題の解決には、日本がリーダーシップを発揮していかねばならない。ポスト京都議定書の枠組みに、米国や中国、インドといった主要なCO排出国が参加するよう、日本がイニシアチブをとる決意でサミットに臨みたい。

先般、御手洗会長を団長とする日本経団連のミッションとともに中東諸国を訪問した。従来、中東諸国とわが国とは石油の供給国、消費国という関係に限られていたが、今後はエネルギー以外の産業や、環境技術、文化、教育等さまざまな分野で重層的な関係を構築することで、双方の考えが一致した。日本経団連のミッションに同行いただいたことで、さまざまな分野に投資してもらいたいという先方の熱意に応えることができたと思う。

構造改革で力強く成長軌道に

わが国経済は、構造改革を進めてきた結果、景気も経済も、力強く成長軌道に乗ってきた。失業率や有効求人倍率、就職内定率、初任給といった面で、次第に成長の果実が実感できるようになっている。私の内閣の使命は、「イノベーション」と「オープンな姿勢」を2本柱に、「新経済成長戦略」を力強く進め、さらなる成長を遂げることである。さらに、成長の実感を地方、そして家計に広げていくことである。企業の求人、採用面でも良い傾向が出てきた。フリーターの常用雇用化も進展している。格差を解消していく上で、何回でも再チャレンジできる社会を構築することが極めて重要であり、237の施策、1720億円の予算の下で着実に推進したい。

また、日本をアジアのゲートウェイにする一環として「アジア・オープンスカイ」つまり空の自由化のための政策について取りまとめを行った。国会も終盤戦に入り、重要法案が成立し始めている。教育3法案も衆議院を通過し、参議院で審議を進めている。公務員制度改革も今国会での成立をめざしたい。

また、地域の活性化については地域が主役となって知恵を出し、それを国が支援していく新しい形の地域再生政策へと大きく舵を切っていきたい。

来たる7月の参議院選挙では、政権与党として、今まで何をやってきたか、これから何をやっていくかを堂々と訴えながら、選挙戦を戦っていきたい。ご支援をお願いしたい。

大田経済財政政策相
−5年間で成長基盤を強化

日本経済の課題は、人口減少下でいかに成長を持続し、国民生活の質を向上させるかである。そのためには、安倍総理が掲げる「オープン」と「イノベーション」という大きな柱に加えて、日本経済全体の生産性の向上が重要である。日本の生産性は90年代に伸び悩み、米国の6〜7割程度にとどまっている。そこで、過去10年の生産性の伸び率1.6%を今後5年で5割増とするためのプログラムを取りまとめ、「骨太の方針」に反映させる予定である。

成長力の加速へプログラム策定

この「成長力加速プログラム」は、(1)成長力底上げ戦略(2)サービス革新戦略(3)成長可能性拡大戦略――の3つの政策パッケージからなる。「成長力底上げ戦略」は、人材、中小企業の成長力を底上げするものである。人口減少下で生産性を上げるには人材の強化が必須であり、就職困難者などを対象に、企業内で職業訓練を受けるプログラムを用意し、プログラム参加者に参加実績等を記載したジョブ・カードを交付する構想を検討している。「成長力底上げ戦略」のもう1つの柱が、中小企業の生産性を上げ、最低賃金を引き上げることである。企業と一体で取り組むため、政労使で構成する円卓会議を設置した。

2つ目の「サービス革新戦略」について、サービス業の生産性が低い理由として、1つにITが本格的に活用されていないことがある。そこで、ITを本格的に活用するための支援や社会的ネットワークの構築、規制改革を行う。同時に、地域の活性化が重要との観点から、地域の企業、金融機関、自治体を本格的に再生する仕組みについて、現在検討を行っている。

3つ目の「成長可能性拡大戦略」については、デジタルコンテンツ、医薬品など今後成長が期待される分野の強化のほか、大学改革、貯蓄から投資への移行を加速させる仕組みを盛り込んでいる。

この「成長力加速プログラム」は、(1)成長力阻害要因を取り除く(2)消費者起点に立つ――という2つの視点に基づいている。民間の成長を阻害するような規制や制度を取り除くとともに、医療・介護、教育、保育など、消費者のニーズが満たされていない分野が数多くあることから、消費者の立場に立って供給サイドの改革を行う。

今後、同プログラムを「骨太の方針」に盛り込み、さらなる改革を進め、今後5年間で実質成長率が2%台後半、名目成長率は3%台後半をめざす。今後の高齢化、人口減少を見据え、この5年間でいかに成長基盤を強化するかが重要となる。引き続き経済界の理解と協力をお願いしたい。

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