日本経団連タイムス No.2871 (2007年8月9日)

業績は賞与・一時金に反映、ヒト中心の経営問題論議の場に

−春季労使交渉総括


日本経団連は毎年、その年の春季労使交渉の回答・妥結結果を大手企業・中小企業別に集計している。今年も、大手企業については6月(6月7日号既報)、中小企業については7月(7月19日号既報)に最終集計を発表した。そこで、今年の春季労使交渉を総括する。

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日本経済は景気回復局面が続いているものの、地域や業種、企業ごとにその回復度合いに差がある。こうした状況を踏まえ、日本経団連は2007年版「経営労働政策委員会報告」(経労委報告、1月1日号既報)において、春季労使交渉における経営側の基本スタンスを示した。同報告では、絶えざるイノベーション(革新)により生産性を上げ企業の競争力を強化することが不可欠との立場から、賃金水準を一律に引き上げる市場横断的なベースアップについてはもはやあり得ないこと、また、個別企業における賃金決定については、個々の経営状況や支払能力を踏まえた上で、個別労使で論議すべきことを改めて強調した。さらに、企業の好業績によって得られた短期的な成果については、賞与・一時金に反映することが基本であるとの考え方を示した。

他方、労働組合の賃金要求をみると、「ベースアップ」の要求を継続ないし復活させた組合もみられたものの、「賃金改善」や「定期昇給分(賃金体系維持分)」という組合が比較的多く、さらには「要求なし」という組合もあった。このような労働組合の要求に対する経営側の回答や妥結内容は、ベースアップ要求や賃金改善要求に応じた企業、定期昇給分(賃金体系維持分)のみと回答した企業のほか、継続協議すると回答した企業もあるなど、さまざまであった。また、賃金改善の具体的内容も各種手当の改善、割増賃金の改訂等、各社の対応に違いがみられた。

賃上げに関する妥結結果の最終集計(日本経団連調べ、全産業平均)をみると、大手企業の妥結額平均は6202円、アップ率1.90%、中小企業の妥結額平均は4149円、アップ率1.64%となった。最終集計の総平均としては大手企業で6年ぶりの6000円台、中小企業で6年ぶりに4000円台となった。

他方、今年の夏季賞与・一時金の大手企業の妥結結果(日本経団連調べ、全産業平均)は91万286円、前年夏季比3.01%で、金額としては4年連続で過去最高を更新し、最終集計としては初の90万円台を記録。このことは、自社の状況を踏まえた交渉を行った結果、業績は主に賞与・一時金に反映して従業員に報いるとの考えが定着したことを示している。

賃金以外の項目では、育児短時間勤務制度の取得期間延長をはじめとした次世代育成支援にかかわる施策、有給休暇の取得促進を検討する機関の設置や年休の計画的取得等、労働時間短縮にかかわる施策、キャリア開発支援など、従業員の働き方に関するさまざまな事項が取り上げられ、労使合意に至る企業もみられた。このように、賃金問題の要求および回答の内容等は各社でばらつきがみられ、また春季労使交渉は賃金問題以外にも「ヒトを中心とした経営の問題」を広く論議する場という位置付けが定着してきた。

【労政第一本部労政担当】
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