日本経団連タイムス No.2909 (2008年6月19日)

新型インフルエンザ対策に関する提言取りまとめ

−国民の健康と安全確保へ、実効ある対策を求める


日本経団連(御手洗冨士夫会長)は17日、「新型インフルエンザ対策に関する提言―国民の健康と安全確保に向けて実効ある対策を」を公表した。同提言は、国民生活委員会(岡部正彦委員長)において、経済界として新型インフルエンザ対策を進めていく上での課題について整理し取りまとめたもの。

提言は、「国民の健康と安全確保に向けて必要とされる施策」「社会機能の維持と事業継続に向けて必要とされる施策」「海外にいる在留邦人への配慮」の3つの柱から構成されている。第1の柱である「国民の健康と安全確保に向けて必要とされる施策」では、ワクチンや抗インフルエンザウイルス薬の備蓄などの問題を取り上げた。新型インフルエンザの拡大防止と感染者の重症化を避けるためには、「パンデミックワクチン」と呼ばれる新型インフルエンザのウイルスが特定されてから製造されるワクチンと、「プレパンデミックワクチン」と呼ばれる現在流行している鳥インフルエンザウイルスを基に製造されたワクチンによる予防ならびに、抗インフルエンザウイルス薬の投与による治療が不可欠だが、現段階ではこれらの国家備蓄や製造体制が不十分である。こうした認識から、提言では、第1に、国民すべてにパンデミックワクチンを早期に接種できるよう環境を整備すること、第2に、抗インフルエンザウイルス薬の国家備蓄を促進すること、第3に、プレパンデミックワクチンの安全性や有効性が確認されれば、医療関係者やライフライン事業者など社会機能維持者に限定されることなく、それ以外の希望者も接種できるよう対象を拡大すること、第4に、抗インフルエンザウイルス薬の企業備蓄を認めるとともに、海外出張者が予防目的で携行するような場合には、医師の処方なしでも可能とすること、第5に、新型インフルエンザ症状のある社員が出た場合の連絡先や搬送先などの対応方法について地域ごとに情報提供がなされること、などを求めた。

2番目の柱である「社会機能の維持と事業継続に向けて必要とされる施策」では、新型インフルエンザ発生時に国の機能がまひすることを回避するためには、総理を本部長とする新型インフルエンザ対策本部が司令塔としての役割を十分に発揮することが不可欠であるとし、そのための平時の備えについて指摘した。提言では、第1に、産学官の連携による検討体制を創設し、新型インフルエンザ発生時の被害想定を行うとともに、被害想定に基づく対策を検討すること、第2に、政府からなされる事業自粛要請や帰国勧告の発動要件を明確化すること、第3に、パンデミック時(新型インフルエンザ大流行時)における労基法などの弾力的運用について考え方を明確化すること、第4に、事業者が安全配慮義務違反を問われないよう配慮事項を明確化すること、このほか、食品製造・販売に際しての注意事項を明確化することや政府の新型インフルエンザ対策を国内外で説明・周知することなどを求めた。

3番目の柱である「海外にいる在留邦人への配慮」では、新型インフルエンザをめぐる状況把握に努め早期に正確な情報を提供すること、海外からの帰国者が空港周辺の施設で停留するための施設確保などを求めた。

日本経団連では、「骨太の方針2008」や7月に予定されている新型インフルエンザ対策ガイドラインの改定などに経済界の考えを反映させるとともに、新型インフルエンザ対策関連の情報を提供するなど各社の対策に資する活動を行う方針である。

【経済第三本部国民生活担当】
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