日本経団連タイムス No.2914 (2008年7月24日)

仙台で東北地方経済懇談会

−「民間と地域の活力を引き出し、逆境を飛躍の好機に変える」基本テーマに


日本経団連(御手洗冨士夫会長)、東北経済連合会(東経連、幕田圭一会長)は16日、仙台市内のホテルで「第41回東北地方経済懇談会」を開催した。懇談会には、日本経団連側から御手洗会長、三村明夫副会長、渡文明副会長、森田富治郎副会長、前田晃伸副会長、佃和夫副会長、大橋洋治副会長、池田弘一評議員会副議長が、東経連側は幕田会長はじめ会員約200名が参加、「民間と地域の活力を引き出し、逆境を飛躍の好機に変える」を基本テーマに意見を交換した。

開会あいさつした東経連の幕田会長は、東北経済について、停滞感が顕著になりつつあるとの認識を示す一方、自動車や電子機器関連の大規模工場建設が相次いで決定されるなど、中長期的には展望が開けていると指摘。これをビジネスチャンスととらえ、東北地域全体として、地場産業の技術力向上や人材育成を図りながら、地域経済の活性化に結び付けていくべきとの考えを示した。

続いてあいさつした日本経団連の御手洗会長は冒頭、岩手・宮城内陸地震被災者へのお見舞いを述べた上で、日本経団連としては1%クラブを中心に支援を進めていると紹介した。日本経済については、エネルギー・原材料価格の急騰により、多くの企業が減収減益の状況にあるが、経済の閉塞感は世界各国に共通の問題であり、技術力の強化、人材育成、インフラ整備により、わが国が先陣をきってこれを克服できれば競争優位を確立できると指摘。これまでの改革路線を一層進めていく必要があると強調した。

■ 活動報告

第1部の活動報告では日本経団連側から、まず三村副会長が地球温暖化問題に対する取組みについて、G8洞爺湖サミットの首脳宣言の内容は経団連として高く評価できると述べた上で、ポスト京都議定書の国際枠組みに産業界の意見が反映されるよう働きかけたいとの考えを示した。続いて森田副会長が税制・財政・社会保障制度の抜本改革について、セーフティネットの持続性の確保、経済活力の維持・向上、道州制・地方分権の推進の3つの視点から、本年秋までに提言をまとめたいと述べた。さらに前田副会長が規制改革をめぐる動きについて、「2008年度日本経団連規制改革要望」では、集中受付月間制度の改善等を求め、14分野152項目の個別要望をまとめたと報告した。

一方、東経連側からは、まず西井弘副会長が「地域産業の競争力強化に向けた取組み」を報告。「東経連事業化センター」を設立し、マーケティング、セールス、知的財産戦略立案等の分野で専門家が企業に高度な支援を行う「マーケティング・ビジネスプラン支援事業」、大学等の優れた研究シーズを基に、域内企業と共同プロジェクトを行い、高付加価値技術や製品開発につなげていく「産学マッチング事業」の2つを柱に活動していると説明した。

次に林光男副会長が「東北の将来像実現に向けた取組み」を報告。東経連が昨年9月に発表した中長期戦略「2030年に向けた東北ビジョン」において、東北地域の自立に必要な取組みを広域的かつ総合的に進めることを打ち出し、東アジアなど海外と東北を直結するネットワークの構築、東アジアと産学連携を推進するイノベーション・センターの形成などを提唱していると紹介した。

続いて佐々木恭之助副会長が、「東北の国際物流に関する取組み」に関し、東北では自動車関連を中心に産業集積が進展しており、国際物流機能の構築が急務であることから、昨年8月に官民一体で設立した「東北国際物流戦略チーム」がポートセールスに取り組んでいると報告。さらに仙台塩釜港から北米、新潟港から北東アジアへの近接性を東北全域で共有する「グローバル・ツイン・ハブ構想」などの取組みを説明した。

観光対策や住宅・食料問題、道州制などめぐり意見交換

■ 自由討議

第2部の自由討議では東経連側から、(1)耐震性、バリアフリー、省エネなどに関し、質の高い住宅の建設、供給の促進が必要(松井彰山形県建設業協会専務理事)(2)国家の危機管理の観点から一層の新型インフルエンザ対策の強化が不可欠(馬場豊仙台銀行常務取締役)(3)昨年、東北観光推進機構が設立され、東経連のビジョンでも東アジア観光交流圏の形成に向けたプロモーション活動の展開を打ち出している(佐藤潤ホテル佐勘会長)(4)資源確保と代替エネルギー開発の両立の観点から、水力、風力、原子力などの立地基地であり、豊富なバイオマス資源を有する東北の役割は重要(小野塚弘東北開発コンサルタント社長)(5)従業者の高齢化など第一次産業が抱える問題は多い中、食料基地の役割を担う東北は食料問題への関心が極めて高い(高橋信行東北緑化環境保全専務取締役)(6)東経連は今年1月に会員に、5月には市町村に道州制に関するアンケートを実施したが、その結果を踏まえるなど、地域の声を反映することが重要(岡本康之東北アイデンティティーフォーラム代表)――などの発言があった。

これに対して日本経団連側が、(1)良質な住宅の建設・流通を促す観点から、住宅ローン減税の継続・拡充、一定水準を満たす住宅への投資減税の導入などが必要(渡副会長)(2)国民の健康と安全確保、社会機能の維持と事業継続、海外の在留邦人への配慮といった日本経団連の「新型インフルエンザ対策に関する提言」(2008年6月)の趣旨を政府の対策に反映させたい(前田副会長)(3)韓国の全経連との日韓観光協力会議で、北東アジア観光ゾーンの形成を通じた経済連携の緊密化に努めている。10月の同会議では観光地間の広域連携や人材育成を取り上げたい(佃副会長)(4)資源・エネルギー価格の高騰は世界全体の経済成長から生じているため、短期的には解決できないが、マーケットメカニズムと技術開発により解決していくべきだ(三村副会長)(5)食料生産の基盤強化に向けた農業界の構造改革努力を産業界として支援していくことが必要(大橋副会長)(6)道州制導入の国民生活へのメリットをより具体的に示すことが重要。広報活動やホームページを活用した情報発信に積極的に取り組み、道州制への理解を深めたい(池田評議員会副議長)――と述べた。

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懇談に先立ち日本経団連首脳は、世界に先駆け非接触動力伝達装置(磁気歯車)の実用化に成功した松栄工機(本社=宮城県大崎市)の産学連携施設である仙台インキュベーションセンターを視察した。

【総務本部総務担当】
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