日本経団連タイムス No.2929 (2008年11月20日)

提言「実効的な電子行政の実現に向けた推進体制と法制度のあり方について」を発表

−「電子行政推進法」に反映へ/利用者の利便性向上など電子行政推進の目的提示


日本経団連は18日、提言「実効的な電子行政の実現に向けた推進体制と法制度のあり方について」を発表した。同提言は、次期通常国会に提出が予定されている「電子行政推進法」への反映を目的とし、わが国における電子行政の実現に向けた推進体制および法制度の整備について取りまとめたものである。

第1章「はじめに」では、同提言を取りまとめた背景を述べた後、電子行政推進法に盛り込むべき柱として4つのポイントを挙げている。1つ目は、予算権限と責任を持ってトップダウンで電子行政を強力に推進する組織として、総理大臣を議長とする「電子行政推進会議」と実務担当機関である「電子行政推進センター」の設置および行政全体の取り組みを指揮するCIOの任命。2つ目は、各行政機関に対し、電子化に先立ち業務改革による行政業務全般の簡素化・標準化を実施することの義務付け。3つ目は、個人・企業を一意に特定できる共通コードの導入による国民本位の行政サービス実現と、第三者機関の設置によるプライバシー保護体制の確立。4つ目は、行政の透明性を高めるため、業務処理のプロセスや個人情報へのアクセスの履歴を、国民がインターネット等を通じて直接確認できる仕組みの確立である。

第2章では、電子行政を推進する目的として、利用者の利便性向上、行政業務の効率化、行政の透明化の3点を明確に示した上で、電子行政の進捗度を4段階に分類し、わが国が先進各国と比べて立ち遅れていることを指摘している。そして、ワンストップ・サービスとシングル・サインオン、プッシュ型サービス、eID(イーアイディー)の4つのサービスを、電子行政を推進する上でカギとなる重要サービスと位置付けている。

第3章ではこのようなサービスをわが国で実現するにあたり、解決すべき5つの課題を指摘している。第1に行政業務の簡素化・標準化、第2に推進体制の整備、第3に法制度の整備、第4に共通コードの導入、第5に電子化についての広報と周知である。

第4章では、これらの課題を解決するために、新たな法制度に盛り込むべき8つのポイントを提示している。第1章で述べた4つの点以外に、(1)原則としてデータのやりとりをすべて電子化し、極力、紙ベースのデータをなくすこと(2)国民の満足感や実感に直接つながる成果指標型の目標設定と、その結果の公開を義務付けること(3)電子認証や署名をオンライン上でより簡便に使えるように電子認証基盤を整備すること(4)費用対効果を踏まえて積極的に民間サービスを活用すること――を挙げている。

第5章「おわりに」では、電子行政は、事務部門で浮いた人的資源を社会保障分野など人手のかかる分野へシフトさせ、少子高齢化社会における良質な行政サービスの維持に貢献すると指摘。また、電子行政という「この国のかたち」を問い直す過程では、地方分権や道州制の議論と並行して都道府県や市町村、民間企業の役割を国民視線から見つめ、再設計する必要があると述べ、締めくくっている。

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日本経団連としては、同提言で提案した体制・法制度の整備を含め、電子行政推進法への反映に向け、政府への働きかけを強化するとともに、電子行政の実現に向けた広報活動等を推進する予定である。

【産業第二本部情報通信担当】
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