日本経団連タイムス No.2930 (2008年11月27日)

「ポスト京都議定書の国際枠組に関する提言」を発表

−COP14に向けた産業界の見解を取りまとめ/国際枠組に不可欠な要素など提示


日本経団連(御手洗冨士夫会長)は18日、「ポスト京都議定書の国際枠組に関する提言−COP14に向けた産業界の見解」を発表、関係各方面に建議した。ポスト京都議定書の国際枠組については、12月のCOP14において、7月の洞爺湖サミットの成果等も踏まえ、これまでの交渉の中間的なレビューが行われる。この機会に、日本経団連として、交渉の主要論点について、考え方を取りまとめた。日本経団連では、COP14をはじめ、さまざまな国際会議の場において、同提言を産業界のメッセージとして発信していく。
提言の概要は以下のとおり。

1.ポスト京都議定書の国際枠組に不可欠な要素

提言では、(1)米国・中国等を含むすべての主要排出国の参加(2)公平な国別削減目標の設定(3)革新的技術開発ならびにその移転・普及――を環境と経済が両立し公平で実効ある枠組を構築する上で不可欠な要素としている。

2.中期目標

生活水準の高い国や排出量の多い国は総量目標を、高い経済成長が見込まれる新興経済国は、GDP当たりの温室効果ガス排出量など、原単位での目標を設定すべきである。また、中期目標の設定方法については、公平性と客観性の確保の観点から、セクターごとに削減ポテンシャルを算出し、それらを積み上げる方式を活用することが合理的である。さらに、目標の達成のための政策手法については、各国の事情に応じた多様な方法が認められるべきである。
なお、いわゆる基準年については、各国の事情が異なる中で京都議定書の場合のように「90年比何%削減」という形では不公平が生じるため、「セクター別積み上げ方式」の結果得られた総量や原単位そのもので示すべきである。

3.技術

革新的技術開発に関しては、技術ロードマップの国際的な共有・連携強化、研究開発投資の拡大を通じて促進していくことが不可欠である。
また、既存の技術を普及・活用する観点から、途上国に対する技術支援も重要である。既に、対外直接投資等を通じてビジネス・ベースでの技術移転が行われている。しかし、途上国では、人材不足や不十分な知的財産権保護等、技術移転の阻害要因も多々指摘されており、これらを改善していく必要がある。
なお、技術移転を推進する観点から、知的財産権の強制的な実施許諾や買い取りを検討すべきであるとの意見が途上国から出されている。しかし、このような措置は、温暖化防止に不可欠な技術開発への意欲を削ぐものであり、提言では、反対を表明している。

4.わが国の中期目標

具体的な対策やコスト負担を十分検討することなく、高い中期目標を掲げれば、海外からの排出権の購入など、大きな国民負担となって跳ね返ってくる。客観的データに基づき、他国の目標と比べ公平で、かつ、具体的な削減策やコスト面も含めた実行可能性に裏打ちされたものとすることが不可欠である。

【産業第三本部環境担当】
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