日本経団連タイムス No.2939 (2009年2月19日)

「戦略的宇宙基本計画の策定と実効ある推進体制の整備を求める」発表

−宇宙基本計画へ盛り込むべき施策提示


日本経団連(御手洗冨士夫会長)は17日、提言「戦略的宇宙基本計画の策定と実効ある推進体制の整備を求める」を発表した。

1969年に宇宙開発事業団を設立し、宇宙開発に本格参入したわが国は、自力で衛星やロケットを製造し、宇宙空間に打ち上げる能力を獲得するとともに、GPSを使ったカーナビの普及等に見られるように、宇宙利用先進国にもなっている。しかしながら、近年の宇宙関係予算削減等により、宇宙開発利用基盤は崩壊の危機に瀕しており、宇宙政策を根本から見直す必要性が生じている。このような状況下において昨年5月に宇宙基本法が成立したことで、関係者は宇宙新時代の幕が開くものと期待している。

提言のポイントは以下のとおり。

まず、「戦略的宇宙開発利用の重要性」として、宇宙が通信・放送や気象観測、安全保障等、国家の政策目標達成のために不可欠なツールを提供するとともに、イノベーション創出も促していることを述べている。

次に、「宇宙開発利用を巡る状況」として、わが国の宇宙開発利用に対する2つの制約について述べている。1つ目は、69年の国会決議等により、わが国では宇宙を軍事用途で使うことが制限されてきたという安全保障面での制約である。2つ目は90年の日米衛星調達協定によって、政府機関が気象衛星等の実用衛星を調達する際に国際入札を義務付けられたという産業振興面での制約である。

続いて、「わが国の宇宙開発利用推進に向けた課題」であるが、宇宙基本法の趣旨に則り、わが国の宇宙開発利用を推進するため、(1)宇宙関係予算の拡充と戦略的な配分(2)高度な技術基盤の確立(3)産業競争力強化(4)安全保障・外交分野での活用(5)人類の夢や希望への貢献――が必要としている。

提言のメイン部分である「宇宙基本計画への要望」では、宇宙基本計画策定にあたり、(i)国家戦略としての宇宙開発利用推進(ii)具体的な政策目標の提示(iii)機器やサービスの調達量と予算額の明示(iv)施策の実施時期の明示――の4つを基本スタンスとした上で、(1)宇宙産業の基盤維持と国際競争力強化(2)宇宙利用の拡大(3)広報・教育――について、必要な施策を盛り込むことを求めている。具体的には、アンカー・テナンシー(政府調達制度)の確立、政府首脳によるトップセールスの実施、安全保障面での積極的な宇宙利用、ODAを活用した宇宙外交と国際協力等を挙げている。

最後に、「宇宙開発利用に関する体制・法制の整備」として、(1)宇宙開発戦略本部の総合調整権限の強化と特別予算枠の付与(2)宇宙開発戦略本部事務局のあり方(3)宇宙関係機関の見直し――について触れている。

宇宙活動に関する法制整備については、民間の宇宙事業を阻害しないよう、留意すべきとしている。

わが国の宇宙開発利用は、宇宙基本法の成立によって新たな局面を迎えており、関係者の英知を結集し、国益につながる戦略的な宇宙開発利用を推進すべきである。

【産業第二本部宇宙担当】
Copyright © Nippon Keidanren