日本経団連タイムス No.2940 (2009年2月26日)

「ポスト京都議定書におけるわが国の中期目標に関する考え方」を公表

−セクター別削減ポテンシャル積み上げ、公平性の確保など


日本経団連は17日、「ポスト京都議定書におけるわが国の中期目標に関する考え方」を公表、関係方面に建議した。政府は、地球温暖化問題に関する懇談会の下に委員会を設置し、ポスト京都議定書の中期目標の検討を行っており、今年6月までに発表する運びである。そこで日本経団連では、中期目標に関する産業界の立場を明らかにし、その実現に向けて働きかけを行っていく。
提言の概要は以下のとおり。

産業界は、製造工程・製品における世界最高のエネルギー効率のさらなる向上をめざすとともに、原子力発電の着実な推進、革新的技術の開発と普及等を通じて、地球規模での排出削減に積極的に取り組む決意であり、日本経団連としては、今後、行動計画を策定する。同時に、今後の中期目標の設定にあたっては、達成のための大きな国民負担や巨額の財政支出が、中期的な経済の悪化や雇用の喪失、産業の国際競争力の低下につながらないよう、地に足の着いた検討を行う必要がある。

ポスト京都議定書の国際枠組みについて、日本経団連では、かねて環境と経済の両立、米国、中国、インド等のすべての主要排出国の参加、公平性の観点からのセクター別積み上げによる国別目標の設定ならびに基準年の見直し、技術(革新的技術開発と既存技術の普及)の重視などの実効性ある枠組みを求めてきた。このような国際枠組みは、わが国が中期目標を国際約束する上での大前提である。

具体的な中期目標のあり方としては、以下の4点が挙げられる。

(1)各部門における具体的かつ実施可能な削減策の積み上げによる着実な削減の確保

中期目標の設定にあたっては、国内での着実な削減を確保すべく、産業、エネルギー転換、運輸、家庭、その他業務の各部門において具体的かつ実施可能な削減策を積み上げていくべきである。既に、極めて高い効率を達成し、削減ポテンシャルが低いセクターもある中で、実現可能性の乏しい中期目標にコミットすれば、国民が不合理な負担を強いられることとなる。

(2)国内での削減ポテンシャルに基づく設定

中期目標の設定は、国内の削減ポテンシャルに基づき行うべきであり、途上国支援とは明確に区別すべきである。目標達成のために海外からのクレジット購入に資金を投入することとなれば、技術開発の原資が奪われ、長期的な温暖化防止に向けたわが国の技術開発が阻害される。

(3)公平性の確保

中期目標は、他国の目標の削減負担との公平性を確保すべきである。不公平な中期目標は、わが国産業の国際競争力の低下や生産拠点の海外移転につながり、雇用の喪失や財政の悪化、地域経済への悪影響を招く。

(4)負担に関する情報開示・国民的コンセンサスの確保

中期目標検討委員会で示されているいずれの経済モデルにおいても、排出量の削減を進めていくためには、家計、政府、企業の各部門における追加的支出、経済成長率の低下や失業率の増加等、相応のコストが必要となるとされている。コスト負担について、国民に対し十分な情報開示がなされ、国民的な合意の下で中期目標が設定される必要がある。

【産業第三本部環境担当】
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