日本経団連タイムス No.2951 (2009年5月21日)

「ポスト京都議定書におけるわが国の中期目標に関する意見」を公表

−重要な3視点など提示


政府の地球温暖化問題に関する懇談会の中期目標検討委員会では、地球温暖化問題への対応をめぐって6つの選択肢を公表し、パブリックコメントを実施した(5月16日締め切り。図表参照)。これに対し、日本経団連では12日、「ポスト京都議定書におけるわが国の中期目標に関する意見」を取りまとめ公表した。概要は次のとおり。

■ 中期目標を考える際の3つの重要な視点

わが国がポスト京都議定書における中期目標を国際約束する際の大前提は、すべての主要排出国が参加する、公平で実効ある国際枠組が構築されることである。その上で、(1)国際的公平性(2)国民負担の妥当性(3)実現可能性――の3つの視点が極めて重要である。

(1)国際的公平性

欧米に比べて、過大な削減費用を課されれば、企業の国際競争力が低下し、国内でのモノづくりが困難となる。その結果、雇用や地域経済に悪影響が及ぶばかりか、エネルギー効率の悪い海外で生産が行われるようになり、地球温暖化対策にも逆行しかねない。

(2)国民負担の妥当性

わが国は現在、社会保障の充実、雇用の確保、地域経済の振興など、多くの重要政策課題を抱えている。こうした中、限られたリソースを、温暖化対策にどの程度配分することが妥当か、中長期的な社会・経済への影響を踏まえ、国民的合意の下で決定する必要がある。

(3)実現可能性

民生部門の目標達成いかんは、国民の購買行動に負うところが大きいが、環境対応製品の普及率については、国民負担の大きさや財源確保等を踏まえた現実的な設定が必要である。
国際競争にさらされる産業界にとっては、特に国際的公平性の観点が重要であり、限界削減費用(二酸化炭素排出量を追加的に1トン削減するために必要となる費用)が欧米と同等となる、選択肢(1)が最も合理的である。

■ 他の選択肢の問題点

選択肢(2)も、国際的公平性の観点から検討の余地がないわけではないが、先進国全体で1990年比25%削減に合意した上で、欧米が目標水準を引き上げ、かつ、国民がさらなる負担を受け入れることが前提となる。こうした点が満たされる可能性は低いため、現実的な選択肢とはなりにくい。

選択肢(3)〜(6)については、(1)国際的公平性(2)国民負担の妥当性(3)実現可能性――のいずれの観点からも問題が多い。選択肢(3)〜(6)のうち最も削減率が低い目標である選択肢(3)ですら、わが国の限界削減費用は突出して高く、欧米の2.1〜4.0倍に達する。

また、国民の負担レベルについても、可処分所得の減少と光熱費の増加により年間6万〜18万円の負担増となるが、こうした数字は、内閣府の世論調査において、国民の約3分の2が、「温暖化対策のために許容可能な負担額は月1000円未満」と回答している実態と大きく乖離している。

さらに、太陽光発電等の大幅な普及や次世代自動車の購入拡大については、国民の十分な理解と行動なしには実現し得ない。しかし、過去15年で、民生部門のエネルギー消費量は一貫して大きく伸びており、これが、選択肢(3)が仮定するようなかたちで、減少に転じるかどうかについては、十分な検討が必要である。

6つの選択肢の概要
【環境本部】
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