日本経団連タイムス No.2971 (2009年10月22日)

「危機を乗り越え、アジアから世界経済の成長を切り拓く」公表


日本経団連は20日、提言「危機を乗り越え、アジアから世界経済の成長を切り拓く」を公表、関係各方面に建議した。同提言は、今月23日からタイで開催される「東アジア首脳会議」に向けて、世界経済危機を克服するうえで、産業界がアジアとの経済関係を重視し、持続的成長に向けて貢献していくというメッセージを発信すべく、緊急に取りまとめたものである。内容は以下のとおり。

提言はまず、現下の世界経済危機を脱するため、アジアの持続的成長に期待が寄せられているとの認識を示している。産業発展、雇用の拡大、民生の安定と向上を通じて、アジア全体が豊かな経済社会を築くことは、結果として世界経済の発展にも貢献する。アジアは、これまで「世界の工場」としての役割を担ってきたが、これに加えて今後は中間所得層の拡大が著しい中国、インド、ASEAN諸国を中心に、国内消費需要の拡大を図り、内需主導型の経済を確立することが不可欠である。そのためには、地域統合の推進による市場拡大と貿易投資の活性化やハードとソフトの各種インフラの整備を通じた成長のボトルネックの解消、域内格差の縮小や成長基盤の確立を図ることが必要である。

次に、わが国の経済力にふさわしい貢献策を明示し、その際、域内の中核的国際機関である、東アジア・ASEAN経済研究センター(ERIA)やアジア開発銀行(ADB)との連携も重要であると指摘している。

そのうえで、「持続的成長のための7つのアクション・プラン」を提示している。ポイントは以下のとおり。

(1)経済連携協定(EPA)の面的・質的拡充

わが国はASEANの主要国ならびにASEAN全体とのEPAを締結しているが、インド、中国、韓国とはいまだに締結していない。これら各国とのEPAないしはFTA(自由貿易協定)の締結を前向きに検討することで、域内経済統合をさらに進めていく必要がある。また、既存のEPAについても、残存する高関税品目の解消、サービス・投資における外資制限の緩和、人の移動のさらなる自由化等、質的向上が強く求められている。

(2)ハード・ソフト・インフラ整備

アジアにおける成長のボトルネックを解消するうえでは、交通、電力、水資源等の基幹インフラを整備することで民間投資を誘致する必要がある。またそのためには、安定した中長期資金調達のための資本市場、知的財産権をはじめとする関連法規などのソフト・インフラの整備を並行して進めていくことが重要である。

(3)地球温暖化対策をはじめとする環境と経済成長の両立

温暖化防止のためには、温室効果ガス排出量が世界1位の中国、4位のインドがポスト京都議定書の国際枠組みのもとで積極的に対策を講じることが不可欠である。わが国としても、志をもって取り組むアジア諸国に対し、技術協力を行っていくことが求められている。

(4)ODAならびにその他公的資金改革の推進

以上のアクション・プランを実施していくうえでは、わが国のODAやその他公的資金の活用のあり方を抜本的に見直し、JICA海外投融資の再開をはじめ、機動的かつ柔軟に対応することが不可欠である。

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日本経団連では提言案の実現に向け、関係各方面に対する働きかけを強化するとともに、引き続きアクション・プランを具体的に掘り下げていく。

【国際協力本部】
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