日本経団連タイムス No.2972 (2009年10月29日)

提言「改めて道州制の早期実現を求める」公表

−地方分権改革推進や先行的取り組み支援など課題提示


日本経団連(御手洗冨士夫会長)は20日、提言「改めて道州制の早期実現を求める」を公表し、新政権をはじめ関係方面に建議した。
提言の概要は次のとおり。

■ 道州制の姿

道州制は分権改革の究極の姿である。道州制のもとでは、現在の国の権限、財源、人員のほとんどが基礎自治体と道州に移される。基礎自治体は住民に最も身近な行政サービスを提供し、道州は基礎自治体を補完しながら、広域的な観点から地域の発展に資する政策を担う。一方、国は外交や安全保障などの対外政策や市場機能の円滑化のためのルール整備といった職務に専念できる。

■ 道州制の意義・目的

こうした役割分担により、行政の効率化・合理化とともに、国と地方双方の政策立案・遂行能力の向上が期待される。

また、地方では、各地域が自らの創意工夫によって、多様な地域経営を実行することが可能となる。とりわけ、産学連携を核とした産業集積や人材育成、インフラ整備、大規模災害への対応、広域医療など、現在の都道府県の枠組みでは十分に対応できなかった課題にも、効率的、効果的に対応できる。

基礎自治体や道州がこうした役割を担うためには、その裏付けとなる財政面でも自立することが重要であり、現在の国と地方の税財源構造の見直しも必要である。

■ 道州制導入に向けて早急に取り組むべき課題

第1に、国から地方に対する権限、財源、人員の移譲をはじめとする地方分権改革を着実に進めるとともに、規制改革や官業の民間開放により行政のスリム化を図っていく必要がある。

第2に、道州制の導入に向けた先行的な取り組みに対する支援が必要である。現在、北海道では道州制特区に関する取り組みが、関西では、関西広域連合の設立に向けた動きが進められている。これらの取り組みは将来の道州制の導入につながる動きであり、全国各地で同様の動きを進めるためにも、道州制特区制度を見直し、これらの取り組みを強力に支援していく必要がある。

第3に、道州制導入の足がかりとして、政府の検討体制や法制度を着実に整備する必要がある。道州制の導入に関する検討機関を内閣に設置し、そこで道州制を進めるうえでの基本理念や手順などを定める「道州制推進基本法」の検討が求められる。

第4に、道州制の導入とあわせて、電子行政・電子社会の推進が必要である。道州制の導入により、複数の県が合併すると、多くの場所で州都までの距離が遠くなり、アクセスが不便になるという指摘がある。電子行政が実現すれば、わざわざ州都まで出向かなくても、自宅や職場で簡単に行政手続きを行うことができる。

最後に、道州制の導入を国民的な動きとしていくためには、国民の理解と支持を受けることが不可欠である。日本経団連では、各地の経済団体と連携して、各地で道州制シンポジウムを開催してきたが、今後も各地で対話の機会を設けていきたい。また、今後、道州制についてわかりやすく紹介するための漫画を活用した冊子の発行やウェブサイトの開設を予定している。

【産業政策本部】
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