改めて道州制の早期実現を求める

2009年10月20日
(社)日本経済団体連合会

日本経団連では、分権型国家の構築に向けて、国の統治のあり方を根本から改革し、地方の自立と活性化を実現するための手段として、道州制の導入を求めてきた。2007年3月に「第1次提言」を、2008年11月には「第2次提言」等を公表し、道州制導入の意義や目的、道州制導入で期待される効果を示すとともに、道州制を支える諸制度や「道州制推進基本法」(仮称)の制定をはじめ導入へのロードマップなどを提案したところである。

道州制の導入は国家百年の大計のもとで行われる大改革であり、政治主導による取組みなくして、その実現は不可能である。新政権の今後の運営にあたっては、分権改革の究極の姿として道州制の導入を重要課題と位置付けるとともに、具体的な成果を早期にあげるよう、政治の強いリーダーシップを期待する。

1.経団連の考える道州制

経団連の考える道州制とは、基礎自治体を包括する広域の地方公共団体として全国を10程度に区分する道州を新たに設置し、基礎自治体、道州、国の三層制とするものである。

道州制の下では、現在の国の権限、財源、人員のほとんどが基礎自治体と道州に移され、基礎自治体は住民に最も身近な行政サービスを提供するとともに、道州は基礎自治体を補完しつつ広域的な観点から地域社会の安定、安心・安全の確保、経済の発展に資する政策を担う。一方、国は外交や安全保障などの国益に関わる対外政策、市場機能の円滑化のためのルール整備、最低限のセーフティネットの整備といった限られた範囲の職務に専念することになる。

2.道州制による地域の自立とグローバル競争力の強化

これらの機能分担により、国・地方を通じた行政の効率化・合理化が図られるとともに、国と地方双方の政策立案、遂行能力が高まることが期待される。とりわけ地方においては、基礎自治体、道州による多様な地域経営の実践を可能とすることにより、新たな成長の創造を通じた活力溢れる自立した経済圏が各地に形成される。また道州制の導入は、縦割りの弊害が顕著となっている行政の実態や国と地方の関係を根本から見直し、より住民に近いところで基礎自治体、道州が内政を担うことによって、住民ニーズに対応した行政サービスの質的向上を図ることができる。同時に、国民・企業の生活圏・経済圏が広域化し、また、国境を越えた地域間の競争が激化する中、産学連携を核とした産業集積や人材育成、海外からの企業誘致活動や観光振興、道路・港湾等のインフラ整備、環境問題への対応、大規模災害への対応や広域医療・搬送体制の整備をはじめ、都道府県の枠組みを超えた行政課題への効率的・効果的な対応が可能となるとともに、グローバルな競争力の向上が図られる。

3.道州制を支える税財政制度の構築

道州制のもと、基礎自治体や道州が財政面でも自立し、その担うべき事務・事業を自らの責任と判断で立案・実施できるよう、国と地方の税財源構造を見直すべきであり、とりわけ地域経営の視点から地方の自主財源の充実を図ることが強く望まれる。地方の基幹的財源としては、地域の住民が担う個人住民税や固定資産税に加えて、地域による税収の偏在性が少なく安定性を備えている地方消費税を充実させることが不可欠である。また、一定の範囲で課税自主権を認めるとともに、地方債の起債を自由化し、基礎自治体や道州が、議会による監視や市場での格付けのもとで、自己責任により資金調達を行えるようにすべきである。

財政調整については、国から地方への関与を弱める観点から、これまで地方交付税が担ってきた垂直的な財政調整を水平的に行う性格を明確にするものとして、新たに「地方共有税」(仮称)を設けるとともに、社会保障や教育、警察など一定水準の行政サービスを保障するための費用については、国から道州に財政移転を行う制度として「安心安全交付金」制度を設けることとすべきである。これらにより地方交付税及び国庫補助負担金は廃止する。

4.道州制導入に向けて早急に取り組むべき課題

(1) 地方分権改革と規制改革・民間開放の推進

道州制の導入に向けた環境整備として地方分権の推進は極めて重要であり、道州制導入も見据えて、国から都道府県、都道府県から市町村への思い切った権限、財源、人員の移譲や二重行政の解消を図るべきである。国の出先機関である地方支分部局については、その事務・事業を財源、人員とともに都道府県等に大胆に移管し、組織の整理、縮小を行うべきである。また、国の法令による義務付けや枠付けを緩和し、地方の条例制定権を有効に活用させることで、地方自治体の政策に関する自己決定・自己責任の範囲を広げる必要がある。
あわせて、官の役割をゼロベースで見直し、規制改革や官業の民間開放などを徹底し、小さな政府、民主導の経済社会運営を目指すことが重要である。

(2) 道州制特区推進法の見直しと広域連合の活用

現在、北海道では道州制特区推進法に基づき、道州制特区に関する取組みが行われ、関西では関西広域連合の設立に向けた動きが進んでいる。これらの取組みは、将来的な道州制の導入につながる動きであり、国をあげて強力に支援し、全国各地で同様の動きが巻き起こる環境を整備していく必要がある。
しかしながら、道州制特区推進法に基づく国から北海道への権限移譲は極めて限定的であり、また、権限移譲に伴う財源の移譲が必ずしも担保されていないことや、北海道以外が同法の対象となるためには3以上の都府県が合併しなければならないなどの問題点が指摘されている。
そこで、道州制特区について、道州制特区推進法に基づく北海道からの提案を最大限認めるとともに、権限移譲が行われる際には財源移譲も確実に行われるよう措置すべきである。また、道州制特区推進法における3以上の都府県の合併を必要とする要件を改め、都府県による広域連合も対象とすべきである。

(3) 道州制導入に向けた体制の整備

上記の取り組みと並行して、道州制の導入に関する検討機関を内閣に設置し、「道州制推進基本法」(仮称)の検討に着手し、早期に同法を制定すべきである。その後、同法に基づき、内閣に本部を設置し、国、道州、基礎自治体の役割や権限・財源のあり方など道州制の導入に関する基本的な方針や、政府が総合的かつ計画的に実施すべき事項などを基本計画として定めるなど、道州制導入に向けた改革に関する施策を集中的かつ総合的に推進すべきである。

(4) 電子行政・電子社会の推進

電子行政・電子社会の構築は、住民や企業にとって利便性の高い行政・社会の実現や行政サービスの地域間格差の是正につながるとともに、国・地方を通じた行政の効率化・合理化や行財政改革に資する。道州制の導入に向けた取組みに合わせて、世界最先端の電子行政・電子社会を構築するための取組みを加速することが重要である。

(5) 国民理解の推進

道州制の導入は、真の地方自治を実現し、地域の自立と活性化を実現するために極めて有効であるが、これらの道州制導入の意義が国民一人ひとりに理解されなければ、道州制導入の積極的な気運は生まれてこない。このため地域の広範な人々の参加を得ながら道州制導入の議論を進展させ、その効果や意義についても理解が深まっていくことが肝要であり、経団連では、各地の経済団体等とも連携を取りながら、道州制導入に向けた機運の醸成と国民理解の促進のための広報活動等を引き続き積極的に展開していきたい。

以上

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