日本経団連(御手洗冨士夫会長)は9日、提言「経済危機からの脱却と持続的な成長の実現に向けた金融のあり方」を公表した。
まず、わが国経済の現状について、最悪期を脱しつつあるものの、いまだ自律的な回復過程に入っておらず、先行きもまだ予断を許さない状況にあるとし、大幅な需給ギャップの存在から、物価下落、資産デフレも懸念されるとも指摘。
企業金融については、格付けの高い大企業を除いて、資金調達・資金繰りの厳しい状況が続いており、年度末に向け資金需要の高まるなか、依然として不透明感が残っているとし、経済危機からの脱却を図るために、財政面のみならず金融面での政策的な対応を求めた。
さらに、わが国経済が中長期的に持続して成長していくうえで、経済危機から脱却した後、国民生活および経済活動を支える金融資本市場の望ましい姿を描いていくことも重要な課題としている。概要は次のとおり。
1.経済危機から脱却するための対策
- (1)低金利政策の継続および流動性確保による長短金利の安定化
- (2)企業金融に対する支援措置の継続
- 必要に応じて機動的に日銀によるコマーシャルペーパー(CP)・社債の買い取り措置の再開
- 景気の自律的な回復が明らかになるまで、日銀による企業金融支援特別オペレーション(0.1%の固定金利で無制限に資金を供給)ならびに日本政策投資銀行等による危機対応業務の継続
- (3)為替相場の安定
- (4)デフレ対策
- 消費者物価が前年比で0〜2%程度の範囲内になるまでの緩和的な金融政策の継続
- リート等(不動産投資信託)に対する資金調達の円滑化、政策金融による支援の継続
- 税制上の各種特例措置による土地・住宅市場の活性化
- (5)金融資本市場の活性化
- 社債市場の基本インフラの整備
- 金融所得課税の一元化の推進など税制面での対応
- 低炭素・循環型社会の実現など成長戦略分野への円滑な資金供給
2.持続的な成長実現にあたっての視点
- (1)成長戦略を支える金融資本市場のあり方
- 多様な投資家の育成、海外投資家資金の活用による国内の幅広い資金需要への対応
- アジア地域の他市場に先んじ、アジア諸国の資金需要にも対応できるよう、税制・規制等の見直し
- (2)間接金融市場と直接金融市場の発展
- 企業の資金調達・資金繰りの一層の円滑化、産業競争力の維持・強化のための資金調達手段の充実
- 国際的な金融規制強化の議論に関する、金融・経済情勢を踏まえた慎重な対応
- (3)民間金融機関との適切な役割分担を踏まえた政策金融の活用
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日本経団連では今後、関係者との意見交換を行いながら、金融資本市場の望ましい姿に関する、具体的な提案を取りまとめていく予定である。