日本経団連タイムス No.2983 (2010年2月4日)

日本経団連労使フォーラムを開催/危機を克服する処方箋をさぐる


あいさつする御手洗会長

日本経団連と日本経団連事業サービスは1月25、26の両日、都内で「第113回日本経団連労使フォーラム」を開催した。全国から経営トップや人事労務担当者ら400人が参加。「危機を克服する処方箋をさぐる」をテーマに、厳しい経営環境を乗り切るための方策や春季労使交渉にあたっての課題・対応策を探った。

冒頭、開会あいさつと基調講演を行った御手洗冨士夫会長は、経済情勢は当面厳しい状況が続くとの認識を示したうえで、今次春季労使交渉・協議では、(1)賃金よりも雇用を優先した交渉が求められる(2)新卒採用に向けた一層の努力が必要である(3)総額人件費の視点を持ち、自社の支払能力に即して判断すべきである(4)労使関係をより深化させていく必要がある――と強調した。

続いて、みずほ総合研究所専務執行役員チーフエコノミストの中島厚志氏が「2010年・日本経済の行方」と題して講演。中島氏は、金融危機を伴う景気後退は回復のペースが遅く、世界経済は来年末ごろまで後遺症が残る可能性があると指摘。企業としては、アジアなど成長地域への展開、サービス業・農業など新たな分野での外需の獲得が必要との見解を示した。

日本経団連の川本裕康常務理事が『2010年版経営労働政策委員会報告』の要点を解説したのに続き、「危機をチャンスに変える企業経営」をテーマに、大橋洋治全日本空輸会長、坂根正弘コマツ会長、竹内弘高一橋大学大学院教授が鼎談。「ピンチをチャンスに変えるには、経営理念や経営ビジョンを明示し、経営者が自らの言葉で社員と対話することが重要」「苦楽をともにするという意識で、ステークホルダーとの信頼関係を構築し、企業価値を高めることが重要」との意見が出された。

1日目の最後に登壇した連合の古賀伸明会長は「労働組合が果たすべき役割」について講演。「厚みのある中間層を基盤とした社会を再構築していきたい」と述べ、全体の底上げと所得再配分機能強化の必要性に言及した。

2日目はまず、「今次労使交渉に臨む方針」と題して、企業の労務担当役員と産別労組リーダーがそれぞれ講演を行った。高橋雄介日産自動車執行役員、谷川和生東芝取締役執行役専務、進藤孝生新日本製鐵副社長の企業労務担当役員3氏は、企業が置かれている状況は極めて厳しいと述べるとともに、「今次交渉は雇用重視の視点が重要」との認識を示した。

一方、西原浩一郎自動車総連会長、中村正武電機連合中央執行委員長、内藤純朗基幹労連中央執行委員長の産別労組リーダー3氏は、厳しい経済情勢は十分認識しているとしたうえで、「賃金引き上げは、デフレの解決につながる」「配分の歪みを修正し、賃金格差の是正を図るべき」と主張した。

続いて、「新しい働き方への挑戦」をテーマに、三井化学の得丸洋専務取締役、凸版印刷の大久保伸一常務取締役人事労政本部長をパネリストに、東京大学社会科学研究所の佐藤博樹教授の進行のもとパネル討論を実施。ワーク・ライフ・バランスの実現には、生産性の向上をもたらす働き方の改革が必要との指摘があった。

特別講演「民主党政権で何が変わったか、何が変わるか」では、東京大学の御厨貴教授が「変えるには時間が必要。“変える”まではいかないが、“止める”ということをした」と指摘。今後時間をかけて、大きな変化が見えてくる時代になっていくだろうとの認識を示した。

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