日本経団連タイムス No.2989 (2010年3月18日)

「グリーン・イノベーションによる成長の実現を目指して」公表


日本経団連(御手洗冨士夫会長)は16日、提言「グリーン・イノベーションによる成長の実現を目指して」を取りまとめ、公表した。政府が昨年末発表した新成長戦略の基本方針では、戦略分野の一つとして、環境・エネルギー分野が取り上げられている。政府は今後、基本方針の肉付けを行い、6月を目途に新成長戦略を策定する予定であり、同提言は、政府の検討に対する具体的な提案として取りまとめたものである。概要は次のとおり。

政府の新成長戦略策定に向けて環境・エネルギー分野の政策提言

■ 環境分野の新成長戦略に対する基本的な視点

わが国は、世界で最も優れた環境・エネルギー技術を活かし、国内外で環境負荷の小さな社会の形成に貢献していく必要がある。同時に、環境問題への取り組みの強化が新規需要を創造し、経済発展や雇用確保を通じて、環境と経済の両立を図る必要がある。

■ 最先端の技術の普及促進に向けた政策

環境と経済の両立のカギを握るのは技術である。2020年ごろまでは、既存の最先端の技術や製品・サービスの最大限の普及に力を入れつつ、2050年を見据え、革新的技術の開発・普及に注力する必要がある。

政府は、省エネ製品の普及促進など環境・エネルギー分野の需要を創出する一方、技術開発・普及の担い手たる企業の活力を強化するための施策を推進すべきである。特に市場の黎明期には、時限的・集中的な税制や補助金、エコポイントなど、政策的な需要喚起が必要となる。

また、環境負荷の低いライフスタイルへの移行を働きかけていくうえで、国・自治体による消費者への環境教育の徹底や、使用段階も含むライフサイクルでの環境負荷のデータ整備も重要である。

さらに、特区制度等を活用し、規制緩和、補助金・税制・金融の支援措置等をパッケージにしたモデル・プロジェクトの推進を検討すべきである。

加えて、わが国の優れた技術を活かし、経済成長と国際貢献を同時に達成するための海外市場の開拓に向け、(1)環境物品・サービスに係る貿易の自由化(2)海外での温室効果ガス削減への新たなインセンティブの検討(3)官民の一体化・連携の戦略的推進(4)知的財産権の適切な保護――などの取り組みが重要である。

■ グリーン・イノベーションの促進に向けて

革新的技術の開発・普及のためには、政府が目指すべき中長期的な低炭素・循環型社会のビジョンとロードマップを描き、産学官で共有することが重要である。そのうえで、イノベーションの種の創出、育成、市場化など、一連の流れを産学官の適切な役割分担と連携のもとに円滑化する必要がある。

イノベーションの萌芽の研究段階に関しては、まず科学技術予算の対GDP比1%の水準を安定的に確保すべきである。また、わが国が目指す低炭素社会などのビジョンを実現するために克服すべき課題と、課題解決に必要な研究開発のポートフォリオを産学官で議論し、明確化したうえで、公的資金を重点的かつ戦略的に投入する必要がある。

次にイノベーションの育成段階では、低炭素社会などを実現するうえで必要となる基礎研究、技術、国際標準化などに係る戦略を産学官で共有する場を構築し、研究開発上の課題を共有していくべきである。政府はこうしたプラットフォームの形成を促すとともに、産学官連携研究開発プロジェクトを資金面などで政策的に支援する必要がある。同時に、民間企業による実用化を視野に入れた研究を推進するため、研究開発促進税制の拡充・恒久化を図るとともに、ハイリスク研究などを支援することが求められる。

最後に、イノベーションの実用化・製品化段階では、モデル実証実験などを政府主導で行うとともに、現行のエネルギー需給構造改革推進投資促進税制の拡充、グリーンITに着目したIT投資減税の創設、産業活力再生特別措置法に基づく特例の拡充などにより、企業投資を支援する必要がある。また、国際市場において製品・サービスを効果的に展開するため、戦略的な国際標準の推進も重要である。さらに、産学官連携による標準化注力分野の明確化や、政府による環境・エネルギー分野の標準化人材の育成、ODAを活用したアジアとの共同研究開発・実証実験などを推進すべきである。

【環境本部】
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