日本経団連タイムス No.2994 (2010年4月22日)

提言「わが国観光のフロンティアを切り拓く」公表

−観光分野の包括的成長戦略を取りまとめ/外国人観光客増加へ具体策提示


日本経団連は20日、提言「わが国観光のフロンティアを切り拓く」を公表した。同提言は、政府の「新成長戦略」策定に向け、観光分野の包括的な成長戦略を取りまとめたものである。わが国観光産業の発展には、国内需要の喚起とともに訪日外国人観光客の増加が不可欠との認識に立ち、そのための具体的な施策を提言した。概要は次のとおり。

観光のコンテンツ強化など

■ 観光のコンテンツ強化

近年、世界的な潮流として、団体旅行から個人旅行へ、名所旧跡巡りから体験型、テーマ性を志向する旅行へと観光ニーズが多様化するなか、日本各地に眠る文化・歴史的遺産や風俗、豊かな自然など、多様な観光資源を活かしたニューツーリズム(体験型観光)を普及・拡大し、幅広い観光ニーズをくみ取ることが求められる。工場見学やものづくり体験を行う産業観光、農業・漁業体験をするグリーン・ツーリズム、医療を受けるために海外旅行をするメディカル・ツーリズム、テレビドラマや映画、アニメなどエンターテインメント・コンテンツと観光の連携、歴史や情緒を伝える街並みの保全・創出、水辺の再生による潤いある都市空間・にぎわいの創出などによる都市観光の推進などが考えられる。

加えて、MICE(Meeting, Incentive, Convention, Exhibition)、特に大規模な国際会議や展示会の誘致も、観光産業の発展を支える。そのために、会議場や宿泊施設などのハードインフラ、会議運営や通訳、ケータリングなどのソフトインフラ両面の整備を、選択と集中の視点をもって効率的に進める必要がある。さらに将来的には、カジノも含めたIR(Integrated Resort、リゾート施設と会議施設の一体型運営)も検討すべきである。

■ 戦略的な情報発信

観光コンテンツを効果的に発信し観光客を呼び込む必要がある。グローバルネットワークチャンネルに訪日観光誘致CMや観光専門番組を放送するなどして日本のイメージアップ戦略を展開したり、ビジット・ジャパン・キャンペーンについても地域・国に応じたPR戦略を重点的に講じたりすることを期待したい。また、日本の観光関連情報すべてにワンストップでアクセスできるようなポータルサイトの構築、観光客誘致における在外公館等の一層の活用、世界遺産登録数の増加などに積極的に取り組む必要がある。

■ インフラの整備

観光客が不自由なく、快適に観光を楽しむのに必要な交通インフラや情報通信インフラ等の整備も欠かせない。羽田・成田両空港へのアクセス改善や、CIQ(税関・出入国管理・検疫)手続きの迅速化などを通じて、入国の際の利便性向上を図る必要がある。また、鉄道、空港、道路といったインフラ相互の連携や、大都市圏の環状道路の整備、ミッシングリンクの解消、ICT(情報通信技術)の利活用による高度交通システムの構築を図り、周遊バスや観光タクシーなどの地域交通、レンタカーサービスも含めネットワークとして一体的に整備すべきである。さらに、多言語対応の総合観光案内所の設置、デジタルサイネージ(電子看板)や携帯端末、カーナビゲーションを利用した移動支援システムの整備が求められる。あわせて、案内表示の多言語化、住居表示制度の改善、宿泊・観光関連施設における外国人受け入れ体制の改善、コールセンターの設置などにも早急に着手すべきである。

【産業政策本部】
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