生物多様性条約第10回締約国会議(COP10) 〜企業活動との関連からみた成果と課題〜 |
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生物多様性条約では、先進国が途上国に対して生物多様性保全のための費用を負担することが定められている(第20条)。しかし、生物多様性保全費用を賄うには公的資金だけでは不十分であるとして、COP9(2008年、ドイツ・ボン)において、市場メカニズムを活用して民間を含む資金調達の仕組み、いわゆる「革新的資金メカニズム」(例=生物多様性オフセット)を議論していくことが決議されていた。これに対し日本経団連は、新しいメカニズムが、各地域における生物多様性の保全に真に貢献する仕組みといえるかという観点から、事案ごとの十分な検討が必要であると主張していた。
COP10では、生物多様性の価値は金銭による代替ができない社会・文化的価値も含んでいるため、生物多様性や自国の自然環境に値段をつけて取引するような仕組みに対する途上国からの強い反対があり、革新的資金メカニズムに関する決議文は、最終的に採択されなかった。
COP8(06年、ブラジル・クリチバ)およびCOP9において、生物多様性条約の目的達成のためには、政府ばかりでなく、民間・ビジネス部門の取り組みが重要であることを指摘する決議が採択された。
経団連では、こうした議論の動向を踏まえ、09年3月に「日本経団連生物多様性宣言・行動指針」を取りまとめ、生物多様性に関する取り組みの基本的な考え方を示し、各企業が生物多様性の保全に向けて主体的に実践することを推進してきた。
また、09年秋に開催された関連する一連の国際会議において、「生物多様性宣言」および「日本経団連自然保護基金」による18年間に及ぶ自然保護活動支援の実績を中心に、経団連の取り組みを世界に発信した。また、COP10期間中には、「ビジネスと生態系に関する国際対話会合」を国際機関と共催し、改めて日本経済界の活動を紹介したほか、その会合の結果をCOP10閣僚級会合の行事のなかで、各国の代表団に説明した。
その結果、COP10において採択された「ビジネス参画決議」は、ビジネスの自主的な参画を促すことを推奨することに重点が置かれ、加えて経団連が、参考とされるべき取り組みをしている組織として例示された。
また、同決議において奨励されている、ビジネスと生物多様性に関する国内イニシアティブの構築と、各国イニシアティブの国際的な連携に関連して、経団連では、日本商工会議所、経済同友会とともに、日本政府やNGOと連携して企業等に参加を呼びかけた「生物多様性民間参画パートナーシップ」(現在430団体が参加)を、COP10期間中の10月26日、正式に発足させた。今後、ホームページ(URL=http://www.bd-partner.org/)を通じた、情報交換、経験交流を推進していくとともに、生物多様性条約事務局等と連携して、各国イニシアティブの国際連携についても協力していく予定である。
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(アンダーラインは経団連の活動を表す) | |||||||||||||||||||||
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