日本経団連タイムス No.3025 (2011年1月1日)

福嶋消費者庁長官と意見交換

−企業行動委員会消費者政策部会


日本経団連は12月14日、東京・大手町の経団連会館で、企業行動委員会消費者政策部会(室町正志部会長)を開催し、消費者庁の福嶋浩彦長官を招いて、消費者庁の今後と企業への期待について説明を聞くとともに、意見交換を行った。福嶋長官の説明概要は次のとおり。

企業への期待などを説明する福嶋長官

市民社会の構成要素として、コミュニティー・市場・政府の3つがある。健全な市民社会の形成に向けて、コミュニティー・市場・政府それぞれのあり方と、それらの関係性を変革する必要がある。

行政を消費者目線に転換するとともに、消費者が自立し主体的に行動することによって、安全・安心な市場をつくる必要がある。消費者がそうした社会づくりの主体となるためには、消費者庁に集まった情報を国民・消費者の共有財産として公開し、共有することが重要である。

例えば、従来、過失による食品表示(JAS法)違反が起きても、事業者が再発防止等の適切な措置を講じれば、行政指導にとどめ、事業者名等の公表は控えていた。しかし、消費者目線では、表示違反していた事実を消費者に伝えるまでが事業者が行うべき適切な措置であり、その措置が講じられなければ、行政によりその情報を公表することにした。また、製品等の事故において、製品起因でなくとも、その製品の事故が今後も続く可能性があり、消費者への注意喚起のために必要ならば、事業者と協力して具体的な製品名を公表することにした。そのような公表に率先して協力してくれる事業者が高く評価される社会が望ましい。

地方の消費者行政については、地域主権の流れのなかで、政府は、ひも付きの補助金ではなく、地方自治体が自由に使える恒久的な財源を確保することが重要である。消費者庁の役割は、消費者行政の充実の必要性を地域住民や地方自治体に強く認識してもらうことにある。

消費者目線と事業者は対立するものではない。消費者目線を持たなければ商品は売れない。むしろ消費者目線を一番持ちにくいのは国の行政である。ぜひ、事業者・消費者・行政の結び付きを深め、お互いに対話できる関係を築いていきたい。

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その後の意見交換においては、「製品起因ではない事故情報の公表は、風評被害や不毛な訴訟を呼び起こすおそれがあるため、慎重な検討をお願いしたい」「消費者被害救済への対応にあたり、米国のような訴訟社会にならないようにすべきである」といった意見が出された。

【政治社会本部】
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