日本経団連タイムス No.3026 (2011年1月13日)

COP16の総括と今後の対処方針など

−経産省の有馬大臣官房審議官と懇談/環境安全委員会


2013年以降のポスト京都議定書の国際枠組をめぐって、11月29日から12月10日まで、メキシコ・カンクンで、国連気候変動枠組条約第16回締約国会議(COP16)が開催された。日本経団連は、米国や中国等の主要排出国が削減義務を負わない現在の京都議定書がそのまま延長されることを懸念し、坂根正弘副会長を団長とするミッションを派遣し、現地で交渉に当たった松本龍環境大臣ら政府関係者に精力的に働きかけた。
環境安全委員会(坂根正弘委員長、天坊昭彦共同委員長)は12月24日、東京・大手町の経団連会館で会合を開き、COP16の総括やCOP17に向けた政府の対処方針などについて、経済産業省の有馬純大臣官房審議官から説明を聞き、意見交換を行った。
有馬氏の説明概要は次のとおり。

■ カンクンで起きたこと

当初から、COP16では「京都議定書の延長」問題が大きな争点になると想定し、政府内では関係閣僚レベルで「京都議定書の延長は絶対受け入れない」という確固たる方針を固めた。
交渉の1日目、途上国が「京都議定書の延長」に関するコメントを読み上げ拍手喝采するなか、日本政府代表団は「27%しかカバーしない京都議定書では、地球のためにならない。米中を含む一つの枠組みが必要。京都議定書の延長はいかなる条件下でも受け入れない」と明確に発言した。会場が静まり返った後、各所で、途上国や環境NGOなどから「日本はカンクン会議を壊す気か」と日本を攻撃する言動が見られるようになった。
しかし、外国からの圧力に対し、日本政府は、「カンクンで何らかの成果が得られるよう可能な限り協力するが、日本にも決して譲れない線がある」と旗幟(きし)鮮明にし、最後まで筋を通した。

■ カンクン合意の内容

結局、カンクン合意では、昨年のCOP15における主要国の参加したコペンハーゲン合意を正式決定する一方、京都議定書の延長については議論を継続することを決定したものの、日本、ロシアなど、京都議定書延長に与(くみ)しない締約国の立場を拘束するものではないことも脚注で明記された。
日本政府はCOP15以降、「コペンハーゲン合意を基礎とした枠組みをつくるべき」との方針を堅持してきただけに、大きな成果と言える。

■ 首尾一貫していた政府代表団

日本が筋を通せた理由は、総理以下、政府が統一方針でぶれなかったこと、また、経団連の皆さんがカンクンまで来て、「日本政府には毅然とした交渉ポジションを取ってほしい」との支援をいただいたことが大きい。
2週間の辛い交渉であったが、政府としては、合格点の対応ができたと考えている。

■ COP17に向けて

2011年のCOP17に向けては、カンクン合意をより実施可能な内容とすべく、交渉に参加していく。京都議定書の延長問題についても、官民が一致して交渉ポジションを堅持していく必要がある。
また、反対するだけでなく、カンクン合意を踏まえ、途上国への技術支援など前向きな提案をしていきたい。

【環境本部】
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