日本経団連タイムス No.3026 (2011年1月13日)

中東・北アフリカ地域駐在大使と懇談

−各国の最新状況めぐり意見交換


日本経団連は12月17日、都内のホテルで中東・北アフリカ20カ国に駐在する大使との懇談会を開催した。経団連から米倉弘昌会長、渡文明評議員会議長・中東・北アフリカ地域委員長(座長)、梅田貞夫日本トルコ経済委員長、竹内敬介日本アルジェリア経済委員長らが出席した。

冒頭、米倉会長が、「わが国と中東・北アフリカ地域との経済交流は、『新成長戦略』が掲げる官民連携による海外インフラ整備や資源・エネルギー分野の共同開発を通じて進めるべきである。また、湾岸協力会議(GCC)諸国との自由貿易協定(FTA)の早期締結も重要である。文化交流では、来年2月に開催されるサウジアラビアの国民的祭典であるジャナドリヤ祭への対応が当面の課題である。日本がゲスト国としてアブドラ国王の招請を受けたことを踏まえ、経団連も日本政府と連携して協力していきたい」とあいさつした。

これに対して、外務省の松富重夫中東アフリカ局長から、「中東は、中東紛争を抱え、また、イラク、イラン情勢をめぐり困難な状況があることから、エネルギー供給の大半を依存する日本にとって安全保障にかかわる重要地域である。近年は、人口増加を背景に消費市場が拡大しており、資源・エネルギー以外のビジネスの可能性が注目されている。中東諸国も経済構造改革を進めており、日本の協力への期待が高まっている」との説明があった。

■ 各国大使説明

田中信明・駐トルコ大使は、「トルコはBRICsに続くVISTA諸国(ベトナム、インドネシア、南アフリカ、トルコ、アルゼンチン)の一角として注目されており、世界的にも中国に次ぐ二ケタ成長を遂げ、GDPでは世界第16位となっている。また、ゼロ・プロブレム外交を推進し、近隣諸国との対立を克服しつつあり、シリア、レバノンともFTAを締結している。エルドアン首相の下で経済の自由化が進み、日本企業が関心を持つ大型インフラ(ボスポラス大橋、地下鉄、原子力発電、通信衛星等)の整備が予定されている。民間との情報交換を図り、大使館としても協力していきたい」と述べた。

神谷武・駐アルジェリア大使は、「今月、前原外務大臣が日本の外務大臣としては初めてアルジェリアを訪問した。同国は石油・ガスに依存した経済からの脱却に取り組んでいる。第3次5カ年計画では、住宅、鉄道、道路、海水の淡水化、製薬等のプロジェクトを推進しており、日本の投資と技術への期待が高い。前原大臣は、メデルチ外務大臣と投資協定および二重課税防止協定の交渉開始で合意した」と述べ、日アルジェリア合同経済委員会の開催により経済交流を強化したいとのアルジェリア側の意向を紹介した。

遠藤茂・駐サウジアラビア大使は、「サウジアラビアはアブドラ国王のリーダーシップにより、科学技術大学院の創設、多数の留学生の派遣、イスラム教以外の宗教との対話推進など改革が進んでいる。日サ関係は、産業協力や要人往来を通じ緊密となっている。ジャナドリヤ祭では、伝統的価値を維持しつつ近代化を達成したいわゆる『日本力』を紹介したい。この機会は、両国関係を強化するチャンスであり、官民が協力して成功させたい」と述べた。

最後に、駒野欽一・駐イラン大使は、「大統領と議会の権力争いのあるなか、核開発のコンセンサスは変更がない。この点で国際世論にイラン側が譲歩する見通しはない。日本としては国際社会と協調していくとともに、制裁の対象外である公害対策、防災、生産性向上等で協力を進めるべきである」と述べた。

【国際協力本部】
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