日本経団連タイムス No.3026 (2011年1月13日)

宇宙政策の現状と課題について説明聞き意見交換

−宇宙開発利用推進委員会企画部会


日本経団連は12月17日、東京・大手町の経団連会館で、宇宙開発利用推進委員会企画部会(栗原昇部会長)を開催した。当日は、和歌山大学の秋山演亮宇宙教育研究所所長・特任教授から、宇宙政策の現状と課題について説明を聞くとともに意見交換を行った。
秋山氏の説明概要は次のとおり。

■ はじめに

和歌山大学宇宙教育研究所は2010年4月1日に発足し、6月に小惑星探査機「はやぶさ」の帰還を中継した。
日本は、旧ソ連、アメリカ、フランスに次いで世界で4番目にロケットを打ち上げた。ロケットの製造・打ち上げ能力がある国は世界でも非常に限られており、他に依存せず「自らがつくれる」という人材を育てていく必要がある。

■ 日本の宇宙産業

日本ではバブル崩壊後の1990年代半ばから、「失われた10年」という低成長時代に入ったが、今のままでは失われた20年、30年となる。こうしたなか、世界的に宇宙利用産業は規模が毎年14%、5年で倍増する急成長市場であり、今後の日本を支える有望な市場である。
日本は世界有数の宇宙技術保有国であり、衛星打ち上げ数は世界第3位である。宇宙関連産業(衛星・輸送系)の規模として米国は4兆5000億円、欧州は7300億円であり、官需と民需の比率は各4割程度である。一方、日本は2348億円であり、そのうち官需が9割である。これまで日本は研究開発が中心であり、産業化が不十分であった。地上インフラが整備されていないアジア市場等の宇宙インフラの獲得を目指すべきである。

■ 推進体制

2008年5月に自民党、民主党、公明党の3党により宇宙基本法が成立した。民主党政権になってから、政府の宇宙開発戦略本部に有識者会議が設置され、私は委員を務めた。
10年4月に有識者会議がまとめた提言は、経団連の「国家戦略としての宇宙開発利用の推進に向けた提言」と多くの内容が同じであった。宇宙開発利用に関する予算権や人事権を集約する宇宙庁の設置も提言したが、年初の通常国会に関連法案が提出されるのは難しい。

■ 超小型衛星

政府は超小型衛星研究開発事業を実施しており、和歌山大学などが参加している。超小型衛星の具体的な観測対象は森林火災などで、産業化に向けたシステムをつくることを目指している。

◇◇◇

意見交換では、政府の実用衛星の整備・運用の主体に関する委員の質問に対して、秋山氏が、「現状では複数省庁が利用する場合には、どこが中心となるか決定できないという問題がある」と答えた。

【産業技術本部】
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