日本経団連タイムス No.3027 (2011年1月20日)

新卒者の採用選考活動の在り方について報告書を公表

−就職・採用活動の早期化是正に向け「倫理憲章」の見直し進める


日本経団連は、昨今の就職・採用活動の早期化・長期化による学業への影響を懸念する声の高まりを受け、報告書「新卒者の採用選考活動の在り方について」を取りまとめ、12日公表した。

現在の就職・採用活動の問題点は、特に、学部3年・修士1年次の早い段階から、説明会など多くのイベントが開催され、昨今の就職難の現状もあり、学生が殺到するという過熱ぶりにある。こうした早期化ゆえの長期化に対し、さらなる対応が必要であるとの考えから、「大学卒業予定者・大学院修士課程修了予定者等の採用選考に関する企業の倫理憲章」(倫理憲章)の内容を早期に見直すこととした。

見直しにあたっては、第1に、「倫理憲章」の実効性の担保の観点から、多くの企業に支持され、遵守される中身であること、第2に、多様な学生の立場を尊重することが重要であるとの前提で検討した。

見直しの内容は次のとおり。なお、今回の見直しは2013年4月入社対象者の採用選考活動から適用する。

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まず、現状への対応として早期化の是正が重要であるため、広報活動の開始時期を「倫理憲章」上に規定、その開始日を学部3年・修士1年次の「12月1日」とした。それより前の期間においては、インターネットなどを通じた、不特定多数の学生向けの情報発信のみ実施可能とし、大学が行う学内セミナー等への参加も自粛するものとする。

選考活動の開始時期については、現行どおり、最終学年の「4月1日」とした。その理由は、(1)学生にとっての就職活動期間・機会の確保(2)通常、大手の後に選考を開始する中堅・中小企業の選考期間・機会の確保(3)最終学年の夏ごろにピークを迎える理系学生の研究日程への配慮(4)景気の見通しが不透明で厳選採用が続くなかでの混乱の回避(5)「4月選考開始」が定着したなかでの大幅な見直しによる「倫理憲章」の実効性の低下の回避――などを総合的に判断したものである。

また、採用選考時期の問題とは別に、昨今、社会的な要請が高まっている海外留学生や未就職卒業者への対応を図るため、通年採用や夏季・秋季採用、既卒者の応募受け付けなど、多様な採用機会の提供に努めることを新たに「倫理憲章」上に明記することとした。

なお、残された課題として、一般的に学部3年・修士1年次の夏季に実施されるインターンシップの取り扱いがある。最近では、本来の就業体験の提供という趣旨から外れた企業セミナーと大差ないものが開催されている実態があるほか、学生側も就職活動の一環ととらえており、過熱化の一因となっている。

今後の対応として、12月1日より前に実施可能なインターンシップは、採用選考活動と一切関係ないものとして整理する方向で検討を深め、同報告書の内容とあわせて「倫理憲章」に盛り込み、3月末までに公表する予定である。

報告書の全文はホームページ( http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2011/001.html )に掲載。

新しい採用選考スケジュールのイメージ(現行との対比)
【労働政策本部】
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