日本経団連タイムス No.3028 (2011年1月27日)

経済統計の現状と課題を聞く

−経済政策委員会統計部会


日本経団連の経済政策委員会統計部会(竹原功部会長)は13日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、日本経済新聞デジタルメディアNEEDS事業本部の飯塚信夫シニアエコノミストから、わが国における経済統計の現状と課題について説明を聞き、意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ 評価が低いGDP統計

景気動向を示す統計のなかでも、最も注目度が高いのはGDP統計である。しかし、民間エコノミストからの信頼は注目度の高さに比べて低い。1次速報から2次速報にかけてのGDP成長率の改定幅が比較的大きいことが主因である。GDP統計は、さまざまな基礎統計を加工してつくられる「二次統計」であるため、このような事態が生じるのは避けがたい。例えば、1次速報段階では、設備投資や在庫の推計に用いる財務省「法人企業統計調査」が未発表であるため、推計を行う際に一定の仮置きを行うが、2次速報では法人企業統計を反映するため、成長率が改定される。問題は、近年この改定幅が拡大傾向にあることである。

改定の原因を外部からチェックできない点も、エコノミストが不満を抱く一因である。GDP速報の民間企業設備投資は、生産関連統計から推計した「供給側推計」と法人企業統計などから推計した「需要側推計」を加重平均して作成しているが、供給側・需要側それぞれの推計値は公表されていない。改定の原因がわかりやすくなるように、それぞれの推計値を公表することが望ましい。

また、2次速報値と翌年末に公表される確報値との間にも、少なからず乖離が生じている。推計に用いられる基礎統計が、速報と確報で大きく異なることが原因であり、これも避けがたい面がある。しかし、こちらも近年、改定幅が拡大傾向にある。人員面の制約はあるものの、速報段階において、支出側だけでなく、分配側(所得面)からもGDPを推計するというクロスチェックで、GDPの精度を高めることが求められる。

■ 雇用関連統計の論点

雇用関連統計では、総務省「労働力調査」と厚生労働省「毎月勤労統計調査」の連携を求める声が民間エコノミストの間では強い。両統計では、概念の違いから雇用者数に、約1千万人の違いが生じる。また、毎月勤労統計の「パート」からは、非正規労働の実態は把握できない。こうした点は統計に慣れているエコノミストであれば知っていることであるが、より幅広いユーザーである、国民の誤解を生じやすい。雇用政策に重点が置かれているというのであれば、多くの国民が正しく雇用の実態を把握できるようにするためにも、両統計の連携が求められる。

■ 物価統計の論点

金融政策などを考えるうえで注目される総務省「消費者物価指数(CPI)」は、個々の価格を家計の消費ウエートで加重平均しており、そのウエートは5年ごとに入れ替えている(ラスパイレス型指数)。現在、2005年の消費ウエートが用いられているが、今年8月の2010年のウエートへの移行によって、CPI変化率の大幅な下方修正が予想されている。参考系列として、ウエートを用いる年を毎年変更する連鎖型指数も公表されており、これも考慮に入れて物価動向を見る必要がある。

さらに、現在は「生鮮食品を除くCPI上昇率」がインフレの尺度とされているが、食料やエネルギーの大半を輸入に頼る日本では、エネルギー価格の上昇は必ずしも国内要因とは言えない。国内経済の「体温」としての物価を測り、金融政策の判断材料とするためには、「食料・エネルギーを除くCPI」を重視すべきだろう。

【経済政策本部】
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